
(C)NORDISK FILM PRODUCTION / LAVA FILMS / NORDISK FILM PRODUCTION SVERIGE 2024
公開日(日本):2025年5月16日
監督:マグヌス・フォン・ホーン
脚本:ミハウ・ディメク
キャスト:
カロリーネ:ビク・カルメン・ソンネ
ダウマ:トリーヌ・ディルホム
ペーター:ベシーア・セシーリ
ヤアアン:ヨアキム・フィェルストロプ
ネタバレを含む内容となります。ご注意ください!
陰影、奥行き、一つひとつのカットがバチバチに決まっていて、芸術性の高さを見るのはマグヌス・フォン・ホーン監督の長編監督第3作『ガール・ウィズ・ニードル』
どのシーンも趣向をこらしまくっていて、視覚的に強烈な印象を残してくる。
特に記憶に残ったのは、縫製工場の中でたくさんの針子たちが働く中、ただ一人カロリーネだけが際立って見えるカット。
フォーカスの当て方だろうか? 照明の使い方だろうか? 白黒ながら、カロリーネの顔だけに自然に光が当たり、他の人物たちは影の中に沈む。その演出により、観客の視線は自然とカロリーネへと導かれていく。
顔に強く陰影を出すライティングは、奇妙でおとぎ話のようなな雰囲気を生み出しており、実際にマグヌス・フォン・ホーン監督も「これは貧しいカロリーネが菓子屋に住む魔女に出くわす、大人のおとぎ話だ」と語っている。
かと思えば、この“おとぎ話”は実際に起こった事件を元に作られており、ダウマ・オウアビューは実在した人物であり、1913年から1920年にかけて25人の赤ん坊を殺している。
なんとも掴みどころのない奥行きのある映画だ。
貧困と無知が映し出す時代背景
物語の舞台は第一次世界大戦直後のデンマーク。
主人公カロリーネは、夫を戦争に取られ、縫製工場で針子として働きながら貧しい暮らしを送っている。
工場長と恋に落ち、子を授かるも、身分の違いからあっけなく捨てられてしまう。
絶望の中で自ら中絶を試みるが失敗。彼女はダウマという中年の女性に助けられダウマの「子どもを裕福な家庭に養子に出してあげる」という言葉を信じて、赤ん坊を手放してしまう。
中絶のシーンは目を背けたくなるほど痛々しく、観ていて「本当にそんなことできるのか?」と息を呑む。
だが、そんな凄惨な場面でもダウマの表情はどこかぼんやりとしていて、正気を感じられない。
その分、強烈な陰影とともに画面に映える彼女の姿は、不気味さすらも芸術的に際立っている。
この描写は当時の貧困層がどれほど無知であり、現実に無力だったのかをうまく象徴しているように思える。
不当な扱いを受けてもカロリーネに怒りや悲しみの表情はほとんど見られず、それが逆に「こういう仕打ちは当たり前だったのではないか」と想像させる。
唯一戦争で顔の半分を無くした夫が帰ってきたときに、カロリーネは怒りを見せて夫を追い出すが、自分が生きていくためにに見せたどこか野性的な感情に思える。
初めて現れる“感情”と歪んだ母性
カロリーネがアパートを追い出され、次に住む親子が内見に来たシーン。子どもが駄々をこねると、母親が躊躇なくブン殴る姿に、当時の「子ども」という存在の扱いがいかに軽視されていたかがうかがえる。
子どもを手放したあと、カロリーネが「重大な過ちを犯してしまったかもしれない」と気づく場面では、初めて感情が表情に現れる。この一瞬の表情の変化は逆に深く心に残る。
物語の核心となるのはダウマは「医者や弁護士のような裕福な家庭に養子に出す」と言いながら、実際には赤ん坊を押し潰して川に流していたということ。もちろん、カロリーネの赤ちゃんも含まれている。
夫が戦争に取られ困窮した母親は子供を育てることができない。
裁判の場で、ダウマが「誰もできないことをやってあげた。表彰されるべきだ」と叫ぶ姿は狂気そのものであるが、「じゃあどうすればよかったのか?」という葛藤も生まれる。
未来への希望と“母性”の再生
ダウマ逮捕され、孤児院に預けられていた彼女の一人娘を、カロリーネが迎えに行く。このラストは、物語全体の陰惨さとは対照的に、母性の再生というわずかな希望を提示している。
感情表現の少ない本作において、唯一強烈に感情が炸裂するのが、浴槽でのかぎ針のシーンと、赤ん坊を押し潰す瞬間の悲鳴だ。静かに進行する物語の中で、これらの場面は観客の心を貫く。
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