
(C)2025「RENOIR」製作委員会+International Partners
公開日(日本):2025年6月20日
監督:早川千絵
脚本:早川千絵
キャスト:
沖田フキ(鈴木唯)
沖田詩子(石田ひかり)
御前崎透(中島歩)
北久理子(河合優実)
濱野薫(坂東龍汰)
沖田圭司(リリー・フランキー)
ネタバレを含む内容となります。ご注意ください!
子どもの目線だけど、大人になってからの記憶のような感覚
『ルノワール』は確かに子どもの視点で描かれている。でも観ていて強く感じたのは、「大人になってから、あのときの自分を思い返す」ような視点。
うまく言葉にできないけど、「今思えばあのとき……」という気持ち。それが作品全体に静かに流れていて、まるで自分の記憶を掘り返されているようでした。
記憶の曖昧さが美しく表現されている白い馬のシーン
とても印象に残ったのが白い馬が登場するシーン。
冷静に考えると、あの場所にフキがいて、飼育員らしき人までいるのは明らかにおかしい。でも子どもの記憶ってそういうもので、「そういえば白い馬が目の前にいた記憶がある気がするけど、あれって夢だったのかな?何かと何かの記憶が混ざってるのかな?」という曖昧さ。
その混乱が画として描かれることで、「記憶のリアリティ」が逆に浮かび上がるように感じました。
「今思えば」見えてくる大人の事情
映画の中でフキが体験する日常の断片は、子どもの視点で描かれているからこそ、大人になった今になって初めて「そういうことだったのか」と理解できることがたくさんあります。
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今思えば、テレクラで出会った大学生と会ったのは危なかった
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今思えば、となりの団地のお姉さんの部屋はうちと間取りが似ているはずなのに違う印象だった
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今思えば、あの友達のお母さんは私が遊びに来るのが嫌だったんだろうな
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今思えば、お母さんと一緒にいた男の人は怪しかった
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お母さんは常に眉間にシワを寄せていた。今思えば、それはお父さんのことで大変だったからかもしれない
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お父さんが死ぬ前に喪服を用意していたことには、今思っても少し怒りを感じる
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お父さんはとにかく優しかった。だけど、死んでしまった
この「今思えば」の連なりこそが、本作のテーマであり、映画という表現でしか描けない“過去と現在の感覚の交差”だと感じました。
小説や漫画では描ききれない、“記憶”のニュアンス
この作品を創った早川千絵監督はきっと、「今思えば」という感情を、小説や漫画ではうまく表現できないからこそ映画という手段を選んだのだろうと勝手に思っています。
静かに流れる映像と時間、無音の余白のような演出が、記憶のグラデーションを見せてくれる。これは映画じゃないと絶対に成立しません。
フキという存在の“輪郭の曖昧さ”
主人公・フキはどこかフワフワしていて、自我のようなものが見えてこない。何かを自分で決断するという場面がほとんどありません。
それはたぶん、「大人の記憶の中のフキ」だからなのだと思います。
お父さんが亡くなるという大きな出来事も、どこかぼんやりと描かれていて、それすらも「当時の記憶としては曖昧だったのかもしれない」と感じさせるのが印象的です。
「死」がファンタジーとして描かれる冒頭
冒頭の作文のシーンから、フキは「死」というものをまるで遠い出来事のように話しています。
現実味のない“死”の描写が、逆に子どもの視点のリアルさを際立たせていて、大人になった今観るとその距離感に胸が詰まります。
観終わった直後は「?」でも、時間が経つほど沁みてくる
正直に言えば、映画を観終わった瞬間は「これは何の話だったんだろう?」と少し戸惑いました。でも、時間が経つにつれてじわじわと良さが沁みてくる映画だと思います。
「あのシーンは、今思えばこういう意味だったのか」と後から腑に落ちる瞬間が何度もあって、まるで作者の気持ちに少しだけ触れられたような気がしました。
まとめ|“今思えば”を映像化することの力
『ルノワール』は、記憶の曖昧さ、無垢さ、そして大人になったからこそ理解できる切なさを、映像の力で見事に表現した映画なのだと思います。
ノスタルジーでもなく、教訓でもなく、ただ「思い出す」という行為そのものに価値があると気づかされました。
“今思えば”という感情を抱えたすべての人に観てほしい、静かで深い映画体験です。
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