『モネと時間旅行』感想・考察(ネタバレあり)印象派が生まれた時代と、現代のクリエイターたち

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© STUDIOCANAL – COLOURS OF TIME – CE QUI ME MEUT – Emmanuelle Jacobson-Roques

公開日(日本):2026年9月18日

監督:セドリック・クラピッシュ
脚本:セドリック・クラピッシュ/サンティアゴ・アミゴレーナ

キャスト:
アデル(スザンヌ・ランドン)
セブ(アブラム・バプレ)
セリーヌ(ジュリア・ピアトン)
ギイ(バンサン・マケーニュ)
アブデル(ジネディーヌ・スアレム)
アナトール(ポール・キルシェ)
ルシアン(バシリ・シュナイダー)
オデット(サラ・ジロドー)
カリクス(トセシル・ドゥ・フランス)
クロード・モネ(1895)(オリビエ・グルメ)
フェリックス・ナダール(フレッド・テスト)
フルール(クレール・ポメ)
ヴィクトル・ユゴー(フランソワ・ベルレアン)
サラ・ベルナール(フィリピーヌ・ルロワ=ボリュー)
伯父テオプラストス(バンサン・ペレーズ)
ガスパール(バランタン・カンパーニュ)



 

※本記事には映画『モネと時間旅行』のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

集められたのはクロード・モネの子孫?

ノルマンディーの長年放置された空き家をスーパーにしたい。そんな話から、空き家の持ち主の子孫であろう親族のうち、4人の代表が選ばれる。

実際に空き家に行ってみると、そこにはたくさんの写真や手紙、そして1枚の印象派の絵画が残されていた。

では実際に19世紀後半、そこではどんな人が暮らし、どんなことがあったのか?

そんな過去の物語を、現代パートと交互に見せていくという展開。

19世紀後半、その家に住むアデルという20歳の女性が、パリにいるという母に会いに行く。

道中で、同じ歳くらいの画家・アナトールと写真家・ルシアンに出会い、同じ下宿に暮らしながら、さまざまな経験をしていく。

当時、画家という職業は、依頼主の肖像画などを「写実的」に描くことが求められていた。しかし、写真機が発明されたことによって、存在意義に疑問符がつくようになっていく。

急激に画家が必要なくなったのか?

というと、そんなことはない。

アナトールもルシアンも悲観することなく、前向きに夢に向かっている。

現代パートでは、クリエイターのセブが、自分の本当にやりたいことと、やりたくないけれど金になる仕事との間で揺れ動いている。

オランジュリー美術館の「睡蓮」の前で、恋人兼モデルの写真撮影をするのだけど、着ている服と睡蓮の絵の色が合わないから、デジタル加工で絵の色を変えてしまおうとクライアントが言い出す。

なんとリスペクトのない発言……。

ただ、金になるから文句は言えない。

養蜂家のギィは、このまま環境問題が悪化すれば、蜂がいなくなってしまうと悲観している。

そのほかにも、交通インフラのエンジニアであるセリーヌと、引退間際の教師アブデルがいる。セブを含めた4人で、空き家をどうするかという問題に取り組むことになる。

セリーヌは未来を切り開くためには過去と決別しなければいけないと考えているが、私生活が絶妙にうまくいっていない。

そんなセリーヌに対しても、ギィが寛容的に接するのがとても印象的だ。

さらに教師のアブデルは、一見、絵画の鑑定士との橋渡し役だけの存在に見える。

引退式で見送られるシーンを見る限り「良い教師」というものはどういう風に時代が変わってもなくてはならない存在だというリスペクトが感じられる。

印象派が生まれた時代

印象派の絵画は、写真機の登場によって、それまでの「写実的」な表現とは違う方向へと進んでいった。

目に映るものをそのまま再現するのではなく、光や色、その瞬間に画家が感じた「印象」を描く。

それは、変わっていく時代の中で生まれた新しい表現手法だ。

現代の4人がか「ぶっ飛んで」19世紀にタイムスリップするシーンがあるが、彼らがたどり着くのは「第1回印象派展」。

モネは「印象・日の出」を出品している。

この作品を見た批評家ルイ・ルロワが、「自分の『印象』のまま描いた絵だ」という皮肉交じりに言われたことを逆手に取り、画家たちは自らを『印象派』と名乗っていく。

映画では、この絵が出来上がる過程も描かれていて、とても感動的だ。

モネや印象派については、原田マハさんの『モネのあしあと』(幻冬舎文庫)や、山田五郎さんのYouTubeチャンネル「山田五郎 オトナの教養講座」で詳しく解説されている。

山田五郎さんは2026年7月に亡くなってしまいましたが、チャンネルは公開されています。初心者にも分かりやすい解説がとても心地いいのでオススメです。

『ミッドナイト・イン・パリ』を思い出す

セブたちはもちろん、アデルの生活を直接目で見ることはできない。

しかし、空き家に残された写真や手紙から、当時の生活を想像していく。

ウッディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』は、若い脚本家の主人公が「過去の小説家たちは、きっと簡単に著名になることができたんだろうなー」なんて羨んでいると、ひょんなことから1920年代のパリにタイムスリップするという物語。

ところが、1920年代の著名人たちも、主人公と同じように「過去はいいよなー」と羨んでいる。

その中で主人公が現在の自分を見つめ直すというコメディだ。

『モネと時間旅行』でも、過去を探りながら、現在の自分を見つめ直す主人公たちの姿が描かれている。

どうあがこうと、時代は移り変わる。それに合わせて変わってほしくないものが変わってしまうのはとても悲しい。

だが、「印象派」のように、変わりゆく時代の中で必死に編み出された素晴らしいものがあるのも事実だ。



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