『動物界』フランス映画”らしさ”と”らしくなさ” ※ネタバレあり

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公開日(日本)2024118

監督:トマ・カイエ

『動物界』あらすじと感想

ジャンルにとらわれないフランス映画”らしさ”と”らしくなさ”

フランス映画と聞くとゾンビやヴァンパイアといった【クリーチャーもの】のイメージを抱く人は少ないと思う。

直近で日本で話題になった作品と言えば、アカデミー賞作品賞にもノミネートされた『落下の解剖学』(2024年)があるが、こちらも人間の感情に焦点を当てたヒューマンサスペンスとなっている。

『動物界』はフランスの映画監督トマ・カイエの長編2作目となる作品で、2023年のセザール賞で作品賞こそ逃したものの『落下の解剖学』をしのぐ最多12部門のノミネートを果たしている。

物語の舞台は突如として人間が”動物化”してしまう奇病が蔓延し、発症の原因や治療法が確立していない近未来。

料理人のフランソワの妻であるラナもまた、動物化が進み”新生物”と認定されてしまう。

フランソワは妻が再び元に戻ることを信じて、一人息子のエミールと愛犬のアルベールとともに妻の病院の近く南フランスに移り住むことにする。

こう聞くと謎の病気と闘うパニックスリラーであったり、動物化という部分に焦点を当てたホラーといったSFやファンタジー色が強い作品を連想する人が多いかもしれない。

しかし『動物界』では、父と息子の関係に焦点を当てたヒューマンドラマ色が強いところがフランス映画らしい。

南フランスに移住し、新しい学校に馴染もうとしていたエミールだったが、自身にも動物化の兆しが出てきてしまう。

指先からは新しい爪が生え始め、背骨が変形し、体毛も濃くなってきたのだ。

新生物との”共生”を掲げるノルウェーに対し、フランス政府は新生物を隔離するという政策をとっており、世間でも新生物は排除すべきという声が大きくなっている。

このためエミールは動物化を誰にも言うことが出来ない。

さらに新生物を輸送するバスが事故に遭い、多くの新生物が住居近くの森に逃げ出してしまう。

ラナも逃げ出した新生物の中の一人で、捜索を続けるフランソワと、もう元の人間に戻ることはないのでは?と感じているエミールの間に少しずつ亀裂が入っていく様子が描かれている。

トマ・カイエ監督はパンフレットのインタビュー内で参考にした作品として『パーフェクト・ワールド』(クリント・イーストウッド監督)、『旅立ちの時』(シドニー・ルメット監督)、『テルマ&ルイーズ』(リドリー・スコット監督)、『グエムル漢江の怪物(ポン・ジュノ監督)を挙げており、共通するのは登場人物の感情に焦点を当てた物語となっているところだ。

差別?移民問題?多様性?

エミールが通う学校の同級生たちも新生物に対する声は様々だ。

そんな中でADHDと診断され、新生物に寛容的なニナとエミールは恋仲になっていく。

さらにエミールはバスの事故で逃げ出した中の一人で、鳥への動物化が進んでいるフィクスと森の中で出会う。

フィクスは治療を諦めており、政府から逃げながら一人で生きていこうとしているが、飛ぶことが出来ない。

飛ぶことが出来ないともちろん鳥として生きていくことが出来ないのだが、エミールはフィクスの飛ぶ手伝いをしながら親交を深めていく。

新生物に対する差別や共生を訴える声は、現代の移民問題や性別に対する多様性に対するものとよく似ている。

動物化が未知の病気とされているという点では、新型コロナウィルスが猛威を振るった際も、各国で様々な対応が取られた状況ともリンクしているように思える。

動物化と聞くとファンタジー色あふれる遠い世界の話のように思えるが、人々の反応や政府の対応を見ると現代の身近な問題が連想させられるメッセージ性が強い作品にもなっている。

『おおかみこどもの雨と雪』の影響?

エミールの様子がおかしいことからフランソワはエミールの動物化に気づいてしまう。

フランソワはエミールが隔離されることを恐れ、定期的に爪と体毛を手入れさせることを強制し、敏感になった聴覚には耳栓をさせることで世間に対応させようとする。

しかしエミールの動物化は進み、フィクスとともに森に長居するようになっていく。

さらにある時、ニナとの仲を妬み、エミールの動物化に気づいてしまった同級生から嫌がらせ受け、たまらずエミールはその同級生のことを攻撃してしまう。

住人たちは攻撃的な新生物が現れたと騒ぎ、銃を担ぎエミールを追いかける。

フィクスもエミールが逃げることに加勢するが、フィクスは撃たれて死んでしまう。

エミールも捕まるが、フランソワが警察たちを欺き逃走し、エミールを森に逃がすのだ。

序盤でポテトチップを食べるエミールに対し、フランソワは「添加物まみれの食品に支配されるな」と言うが、エミールは「じゃあそれに反抗するよ」と言いポテトチップを貪ってみせる。

それに対してフランソワが「オレに反抗してどうするんだよ……」というシーンがあるのだが、フランソワはエミールを森に逃がす際、ポテトチップを貪ってみせる。

これから体制に反抗するんだという決意だけでなく、これまで抱いていた「どうやって息子を社会に適合させるか」という自身の父親像にも反抗するという二つの意味が込められており、感動せずにはいられない。

細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)では、狼人間と人間のあいだに生まれた二人の子供の育児に奮闘する母親の姿が描かれている。

活発なお姉さんの雪が人間社会に馴染んでいくのに対し、内気な雨はおおかみとして森での野生の生活に馴染んでゆき、どうしたら人間社会に馴染ませることが出来るのかと母を悩ませる。

しかし、最終的に母は雨が森で生活することを後押しするのだ。

巣立っていってしまう子供を想う母親の寂しさ、親としての在り方を考えさせられる感動作だが『動物界』でも同じラストになっている。

おおかみという点でも、エミールはイヌ科の動物に動物化しようとしていて、影響を受けている作品の一つかもしれない。

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