『TAR ター』あらすじと考察(ネタバレあり)動画を拡散したのは誰?

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『イン・ザ・ベッドルーム』『リトル・チルドレン』のトッド・フィールド監督による16年ぶりの新作は“ケイト・ブランシェット”に向けて脚本を書いたサイコスリラー。

当初は男性の主人公で脚本を書き始めたそうですが、演じることができそうな俳優がケイト・ブランシェットしか見当たらず、女性主人公に書き換えたそうです。

それほど、本作の主人公”ター”という人物は性別も人種も超え、かつてマーベル・シネマティック・ユニバースでは神の存在をも滅ぼす神を演じたケイト・ブランシェットにしか演じられない存在でした。

さらに本作はドラマ仕立ての序盤からホラー仕立てに変わったり、延々とクラシック関連の講釈をたれ流したりと、一見理解しがたい演出で観客を置き去りにしてしまっている感じは否めません。

このページでは最初から最後まで本作のネタバレありでのあらすじと、本作が何を表現した映画なのか考察しております。

 



『TAR ター』作品概要


公開日(日本):2023年5月12日

監督:トッド・フィールド

キャスト
リディア・ター(ケイト・ブランシェット)
フランチェスカ・レンティーニ(ノエミ・メルラン)

シャロン・グッドナウ(ニーナ・ホス)
オルガ・メトキナ(ソフィー・カウアー)
セバスチャン・ブリックス(アラン・コーデュナー)
アンドリス・デイヴィス(ジュリアン・グローバー)
エリオット・カプラン(マーク・ストロング)

『TAR ター』あらすじ

音楽業界の「マエストロ」リディア・ター

アメリカの5大オーケストラで指揮者を務め、作曲家としてもエミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞を獲得し音楽家としての頂点を極める“リディア・ター”

ベルリン・フィルの首席指揮者として活躍し、唯一果たせていないマーラーの交響曲第5番のライブ録音の準備を進めるなか、自伝の出版も控えている。

アマチュア指揮者で投資家のエリオット・カプランとはうまく付き合いながら出資をしてもらい、自身のプロデュースも完璧にこなしています。

音楽大学での講義では、バッハを「20人の子供を持ち家父長制そのものだから聴かない」という生徒に対し、彼の人種差別も含めて完全に論破してやめさせてしまいます。

そんなターを支えるのは、オーケストラのコンサートマスターで同性のパートナーでもあるシャロン。ターはシャロンとともに暮らし、養女のペトラを育てています。

ターのアシスタントを務めるフランチェスカは、指揮者を目指しながら、ターの細かい要望に確実に応え、信頼を得ています。

前任のアシスタントの自殺

そんな音楽家として絶頂を迎えたターでしたが、かつて指導した若手指揮者のクリスタが自殺したという一報が入ります。

ターは騒動に巻き込まれることを恐れ、関連メールを削除し、フランチェスカにも同じように命じます。ターとクリスタは過去に何かがあり、ターはクリスタを指揮者として使わないように関係者たちにメールをしていたのです。

それからというものターの身の回りでは不可思議なことが起こるようになります。書斎では動くはずのないメトロノームが動き出し、ターは冷蔵庫の些細な音でも気になり眠れなくなってしまいます。

オーケストラのリハーサルはそれなりにうまく進みますが、あるとき副指揮者のセバスチャンがターとは異なる意見をぶつけてきます。ターはそれを気に入らず一方的にセバスチャンをクビにしてしまいます。

チェロ奏者に欠員が出てしまい、急遽若いオルガをオーケストラに迎えることになります。ターはオルガを気に入り第一チェロ奏者の存在を無視しオルガをソロ奏者にしてしまいます。

さらに副指揮者にはこれまで献身的に尽くしてきたフランチェスカではなく別の後任者を選んでしまいます。

ターの行動は炎上してしまう

オーケストラの演奏も完成に近づいてきたころ、SNSにはバッハが嫌いだと言った生徒を論破した映像が拡散されてしまいます。

フランチェスカは姿を消し、クリスタの自殺のこともオーケストラの財団に告発状が届きます。さらにこのことを知ったシャロンは、ペトラを連れて出て行ってしまいます。

指揮者を外されたターでしたが、オーケストラ本番に乱入し「これは自分が作り上げた交響曲第5番だ!」と代役の指揮者を殴ってしまいます。

東南アジアでの再出発

全てを失ったターは、東南アジアで再起を図ります。

音楽に対する感性がまだ少ない東南アジアに拠点を移し、学生に音楽を教えながら指揮を執ります。

ターが指揮するのはゲーム「モンスターハンター」シネマオーケストラでした。



『TAR ター』考察

権力のピラミッドを描いた作品

Emmy(エミー賞)」「Grammy(グラミー賞)」「Oscar(オスカー)」「Tony(トニー賞)」の4大タイトルを獲得した者をそれぞれの頭文字をとって「EGOT(イーゴット)」と呼びます。

それほどの賞を手に入れるにはもちろんターの実力でもありますが、実はアメリカの田舎の出身で訛りを必死に隠し世間に受け入れられるように偽名を使っていることがわかります。

さらにオーケストラマスターのシャロンと寝ることで出世の仕方を模索し、ベルリン・フィルの首席指揮者まで成り上がっています。

本作では権力者を利用し、自分も権力者になろうとする人々の模様が描かれているのです。

オルガとは何者なのか?

オルガもまたターと同じように誰かを利用し成り上がっていくことを夢見ている人物なのです。

ターのことを表面上は尊敬していると言いつつも、自伝の出版イベントではターの話を全く聞いていないし、ターの見ていないところでは派手な格好をし夜な夜な遊び歩いていることもわかります。

ぬいぐるみを忘れたオルガをターが追いかけるも、誰も住んでいる様子がないのは廃墟に住んでいるのはターの同情を引くための嘘で、実は住んでいないのではないでしょうか?

動画を拡散したのはフランチェスカ

大学の講義でバッハの学生を論破する動画を拡散したのはフランチェスカで、義のシーンではフランチェスカがスマホでカメラを回しているシーンが映っています。

フランチェスカもまたターを利用しようとしている人物で、指揮者を志願しながらも雑用としてしか扱われない状況に我慢に我慢を重ねています。そんななか副指揮者に選ばれず我慢の限界が来たのです。

このあたりの何とも言えない表情ができるノエミ・メルランも素晴らしいです。

フランチェスカはクリスタとのメールも削除しておらず、いざとなったときの準備を着々と進めていたのです。

ドラマではなくホラー

ドラマ仕立てで描かれている本作ですが、クリスタが自殺したという一報が入ってからホラー風のカメラワークが多用され物語が進みます。

物音が気になり眠れないターはワークアウトに出かけ、ターのことを誰かが見ているような横からのカットが多用されます。これはターは有名人だからどこに行っても誰かに見られている気がするという演出ではないのです。

女性の霊が映りこんでいる

物語の序盤でカメラの端に赤い髪の女性の後ろ姿が映りこんでいるのがわかります。これはおそらく生きているときのクリスタです。

しかし、クリスタが自殺したあと2回、長い髪の生気のない女性の姿が画面に映りこんでいます。これはよくあるホラー映画のいわくつきというわけでなく、監督が意図的に演出しているものです。

ワークアウトをするターの姿を追うカットは、どこに行っても有名なターだから誰かに見られている感じがするではなく、自殺したクリスタの視点です。

ターが夜中に目覚めてしまったとき「なんだかドキドキする演出だな」と思った方も多いと思いますが、実際にクリスタの幽霊が映りこんでいます。メトロノームを動かしたのもクリスタの仕業です。

なぜ嘔吐してしまうのか?

ターがフィリピン(『地獄の黙示録』と川を渡るシーンのセリフがあるが撮影地はベトナムではなくフィリピン)に活動の拠点を移し、ホテルマンにマッサージ店を紹介してもらうシーンで、ターはなぜかレズビアン専門の風俗店に案内されます。しっかりと肩や背中を気にしながらホテルマンに話しかけているにも関わらずです。

音楽とは無縁でターのことなどほとんどの人が知らない東アジアの秘境という感じで演出されていますが、実は皆ターのことを知っていて実生活のスキャンダルまで知っているということです。

このことに驚愕したターは嘔吐してしまいます。

ラストの意味は?

ラストでターが指揮するのはゲーム『モンスターハンター』のシネマオーケストラです。観客たちは獣の被り物を被りゲームの中のキャラクターのコスプレをしているのです。

本作がハッピーエンドかバットエンドか意見が分かれているようですが、ハッピーエンドとするならばターのように権力を振りかざすとここまで落ちぶれてしまうんだというシャロンやフランチェスカからの視点だと感じます。

音楽を教えるという喜び

ターが実家?に帰りビデオで古い番組を見るシーンがあります。これはターが憧れたレナード・バーンスタインが子供たちに音楽を教える番組です。

ラストで辺境で指揮を執ることになるターですが、バーンスタインの音楽番組を見返すことで、初心に帰ることができ、音楽の発展のために教鞭をとることを選んだという解釈もできます。

【ゲーム音楽】という若者が入門しやすいジャンルを選んだということも、ターが本当に純粋気持ちに帰ることができたのだと考えることもできます。

 


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