『イノセンツ』あらすじと考察(ネタバレあり)『童夢』との類似点は?

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第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、ノルウェーのアカデミー賞と呼ばれるアマンダ賞では監督賞・撮影賞・音響賞・編集賞の4冠に輝くなど、注目の熱い北欧サイキック・スリラー。

監督は同じくノルウェーのフィルム・メーカー”ヨアキム・トリアー”の右腕として知られ、『わたしは最悪。』でアカデミー賞脚本賞にノミネートされた実績を持つ“エスキル・フォクト”

大友克洋による漫画『童夢』からインスピレーションを受けたと公言する通り、超能力に目覚めた少年少女が描かれております。

またタイトルの『イノセンツ』のもつ“純粋さ””無邪気さ”の意味にある通り、少年少女の微妙な心情が、繊細に丁寧に描かれた作品になっていました。

集合住宅ならではの様々な事情を持った家庭、大人は知ることのない、子供たちだけで秘密裡に行われる静かな超能力バトルも見どころです。

今回は本作のネタバレに加え、漫画『童夢』との類似点・相違点について書いていければと思います。

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『イノセンツ』作品概要

https://youtu.be/vKIy90fSzqA
公開日(日本):2023年7月28日

監督:エスキル・フォクト

キャスト
イーダ(ラーケル・レノーラ・フレットゥム)
アナ(アルバ・ブリンスモ・ラームスタ)
アイシャ(ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム)
ベン(サム・アシュラフ)
アンリエッタ(イーダの母)(エレン・ドリト・ピーターセン)
ニルス(イーダの父)(モーテン・シュバルトベイト)
ハニ(アイシャの母)(カッドラ・ユスフ)
ベンの母(リサ・テュンネ)

『イノセンツ』あらすじ

郊外の団地に引っ越してきた”イーダ”

9歳の少女”イーダ”は、父の仕事の事情で郊外の自然豊かな団地へ引っ越してきます。

姉の”アナ”は重い自閉症のため言葉を発することができず、母はアナの面倒につきっきりです。イーダは母の愛情不足から、アナを煩わしく思い、つねってみたり靴の中にガラス片を入れたりと陰ながらアナをいじめています。

イーダは同じ団地に住む少年”ベン”と仲良くなります。ベンは軽いものだったら触らずに動かせるという超能力の持ち主ですが、猫の顔を踏みつけて殺すしてしまうという邪悪さを持ち合わせています。

ベンの邪悪さの裏には、近所の子供たちからいじめられているということと、母親のネグレクトがありました。

心を読むことができる少女”アイシャ”

同じく団地に住む少女“アイシャ”は、人の気持ちを読むことができます。

アイシャは言葉を発することができないアナの心を読み、アナと仲良くなります。さらにアイシャの力を借りることで、アナは少しずづしゃべれるようになっていきます。

4人は次第に仲良くなりますが、ベンの邪悪さはときより顔を覗かせます。些細なことでベンとアイシャは口論になり、ベンは攻撃的になりますが、アナが割って入ります。

アナも強力な超能力を持っていました。

母親を手にかけるベン

近所の男の子たちと仲良くなれないことと愛情のない母からの言動に、ベンはついに煮えたぎった鍋を超能力で動かし、母に熱湯をかけ殺してしまいます。

さらにベンの超能力は、自分の思うままに人を動かすことができるようにまでなっていました。

ベンは団地に住む中年男性を自在に動かし、自分のことをいじめる男の子を殺させてしまいます。さらにサッカーをしている男の子の脚の骨を折ってしまったりとやりたい放題です。

心を読むことができるアイシャは、ベンの行動が手に取るようにわるので、心を痛めています。懸命にベンのことを止めようとしますが、煩わしくなったベンはアイシャの母親を操り、アイシャを殺してしまいます。

ベンVSアナ

やりたい放題のベンでしたが、自分より強い超能力をもつアナのことを恐れていました。しかし、アイシャがいなくなってしまってからアナはしゃべることがなくなり、超能力を持たないイーダはその無防備さに怯えて過ごすことになります。

イーダはベンを遊びに誘いだし、隙を見てベンを橋から突き落としますが、失敗に終わります。ベンはイーダが自分のことを殺そうとしていることを知り、イーダを操り殺そうとします。イーダは車にはねられ足を怪我するものの、軽傷に終わります。

病院から戻ったイーダでしたが、いつベンの魔の手が忍び寄るか気が気でなりません。ギプスをした脚ではうまく階段を降りることができませんが、イーダにも超能力が宿り、ギプスを破壊することに成功します。

公園ではたくさんの家族たちが遊ぶ中、ベンとアナの戦いが静かに始まります。ベランダからその様子を見守る子供たちもどこかアナに加勢しているように見えます。

やはりアナの力が勝り、ベンはブランコに座ったまま、静かに息を引き取るのでした。



『イノセンツ』考察

漫画『童夢』との類似点

“エキスル・フォクト”監督が漫画『童夢』からインスピレーションを得たと公言しているとおり、北欧版『童夢』と言っていいほど『童夢』がベースの物語なっています。

『童夢』は『AKIRA』でおなじみの”大友克洋”によって1980年から1981年に連載され1983年に単行本化されました。

『イノセンツ』と同じように『童夢』も集合住宅である【団地】が舞台となっています。

団地と言えば、やはりいろいろな家庭の事情を持った家族が集まっているというのも共通点です。

アナと同じように障がいを持ったヨッちゃんという大柄で超能力を持った青年が登場していたり、ベンと同じようにネグレクトにあっている吉川君という少年が登場しています。

イーダもまた障がいをもつ姉を持つことで周りの目を気にしてしまったり、両親の愛情に飢えているということがわかるシーンが見て取れます。

いろいろな家庭の事情をもつ団地を舞台にすることで、それぞれの子供たちの微妙な心情が見て取れる作品となっております。

それをとても繊細に描くことに成功した”エキスル・フォクト”監督もさすがです。

漫画『童夢』との相違点

本作を観た第一印象としてはかなり『童夢』をベースにしているというものでしたが、改めて『童夢』を読み返すと多くの類似点があります。

ヴィランは子供ではなく痴ほうの老人です。警察の視点で物語が進行することが多く、何人も死人が出ていてマンション中が結構な騒ぎになっています。

バトルもかなり派手で、超能力者は空を飛んだり、大爆発が起こったりと『イノセンツ』とは異なっています。

ラストのバトルこそ静かに行われるものの、『童夢』やはり青年漫画の王道の展開が繰り広げられております。

『ぼくのエリ 200歳の少女』や『ボーダー 二つの世界』のように日常の裏側ではこんなことが起こっているかもしれないというのは北欧映画の特徴の一つとも言えますが、『イノセンツ』も【北欧テイスト】を加えることで、より雰囲気のよい作品になったと言えます。

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