『ミツバチと私』あらすじと考察(ネタバレあり)

※この記事にはプロモーションが含まれています。

(C)2023 GARIZA FILMS INICIA FILMS SIRIMIRI FILMS ESPECIES DE ABEJAS AIE

自身の性に迷う子どもの葛藤と、寄り添う家族の姿を描いたスペイン発のヒューマンドラマ。

8オーディションで選ばれた新人ソフィア・オテロが主人公アイトールを繊細かつ自然に演じ、2023年・第73回ベルリン国際映画祭にて史上最年少となる8歳で最優秀主演俳優賞(銀熊賞)を受賞。

スペインの新鋭エスティバリス・ウレソラ・ソラグレンが長編初監督・脚本を手がけています。



『ミツバチと私』作品概要


公開日(日本):2024年1月5日

監督:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン

キャスト
アイトール/ココ(ソフィア・オテロ)
アナ(パトリシア・ロペス・アルナイス)
ルルデス
(アネ・ガバラン)
リタ(イツィアル・ラスカノ)
ゴルカ(マルチェロ・ルビオ)

レイレ(サラ・コサル)
エネコ(ウナス・シャイデン)
ネレア(アンデレ・ガラビエタ)
ジョン(ミゲル・ガルセス)

『ミツバチと私』あらすじ

フランス・バイヨンヌに住む母親のアネは休暇を利用し、仕事があるという父親を残しスペイン・バスク州にバカンスに向かいます。

3人兄弟の末っ子のアイトールは自分の名前を嫌い、家族からはココと呼ばせています。

バスクにはアネの母親のリタと叔母のルルデスが暮らしています。

ルルデスは養蜂場を営んでおり、ミツバチの針を使った伝統的な鉢針療法の診療所も運営しています。

アネの父は有名な彫刻家で、アネは父が残した工房を使い芸術学校の教師の試験に必要な作品を創ろうとしているのです。

ある日、兄弟や友達とプールに行く中、アイトールはどうしても水着姿になりたくありません。

ココの友人のネレアは、アイトールが男の子なのに座ってトイレをすることに疑問を持ちます。アネは「そういう人もいる」とアイトールを擁護しながらも、アイトールは行き場のない怒りをアネにぶつけてしまいます。

夜になると兄のエネコに「私はお母さんのお腹の中にいたとき何か問題があったのか?」とやり場のない疑問をぶつけ、エネコは「お前は何も問題なかった」と優しく諭します。

アネはココの悩みに気づきながらも「性別にはとらわれず育てるべきだ」と自負しています。

しかしルルデスは、ココは自分のことを女の子だと思っているから親側もしっかりと線引きしてあげることが必要だと言います。

ココはルルデスが運営する養蜂場に行き、初めてミツバチに触れます。

ハチは刺すものだと思っていたココですが、ルルデスから大人しくしていれば刺されないことを聞き、次第に慣れていきます。

ルルデスはココを自然に触れさせ、山を歩き、川で泳いだりしてココは次第に心を開くようになっていきます。

なかなか友達ができないココでしたが、同世代のネレアはココの裸を見るなり、「私のクラスにも同じような子がいるから」とココを安心させます。

ある日ココは教会に描かれた壁画から聖ルチアのことを知ります。

祖母・リタから信仰とは自分の心の中にある確信だということを教わったココは、自分もルシアのようになりたいと思うようになります。

アネと話し、ココはいとこの洗礼式に女の子用のドレスを着て行こうとしますが、遅れてやってきた父に猛反対されてしまいます。

結局男の子の服で式に参加しますが、ココは「一人になりたい」と言いどこかへ姿を消してしまいます。

式に参加していた皆で必死にココを探します。兄のエネコはココがルシアと呼ばれたがってたことを思い出し、ルシアと叫びます。

アネもいろいろな感情を振り払い、ルシアと叫びながら懸命に捜索します。

一方でココはミツバチたちに「ルシアが来た」ということを報告していました。

皆の前に姿を現たルシアは帰りの車内の中、風に揺られながらすがすがしい表情を見せるのでした。

 

『ミツバチと私』考察

アイトール(ココ)役のソフィア・オテロ

アイトール(ココ)を演じたのは、撮影当時9歳の「ソフィア・オテロ」

バスク地方の出身で、本作のために500人の中からオーディションで選ばれた新人俳優です。

オーディションの初期では、「プールに登場する子供の一人」くらいの位置づけでしたが、最後の最後でココ役でオーディションを試みたら素晴らしい演技を見せたようです。

第73回ベルリン国際映画祭でコンペティション部門で史上最年少で主演俳優賞を受賞しております。

ベルリン国際映画祭は2020年から男優賞・女優賞という性別の区分を廃止しており、まさに本作のテーマにもふさわしい受賞となりました。

本作を観た後では愚問とわかっていながらも、ソフィア自身の性別はどちらなんだろう?と考えてしまうほど、繊細でリアリティのある演技を見せています。

子供の目線・母の目線

本作は子供であるアイトールと母であるアネの目線で描かれています。

アイトールはやはり「自分は普通ではないかもしれない」という不安があり、兄に「自分はお母さんのお腹の中で問題があったか?」と質問したり、不安からおねしょをしてしまったりします。

「ココ」と呼んでほしいと言ったり、やはり呼ばないでほしいというのも子供ならではの不安定さからくるものなのかもしれません。

もしくはフランスで著名の「ココ・シャネル」から取ったものなのか、バスク語でココは「坊や」的な意味があると後から知ってしまったものなのかどちらにしても子供らしさが伺えます。

同世代の友人のネレアがあっさりとココのアイデンティティを認めるあたりは、若者世代のほうがやはりジェンダー教育が行き届いているのか?と考えさせられます。

なぜ「ルシア(ルチア)」と呼んでほしいのか?

教会の壁画で聖ルチアの壁画を見たことによりアイトールは自分を「ルシア(スペイン語でルチア)」と呼んでほしいと願うようになります。

ルチアは304年に殉教した人物で、ルチアの母はルチアを異教徒と結婚させようとしますが、ルチアは処女を守るために拒否します。

しかし逆上した異教徒はルチアを火あぶりにすべきと密告し、拷問として目をえぐりだされても見ることが出来たとされています。

アイトールはおじいさんに信仰とは自分の思うことを確信することという風に教えてもらいます。

アイトールはルチアの信仰を美しいと感じ、自分が女の子でるという想いに勇気をもらったのだと考えられます。

 

母のアネもアイトールと向き合うことで成長していきます。

「性別にこだわらずに育てたい」なんていうのはアイトールと向き合うことから逃げているのであり、ルルデスに図星を付かれ憤りを見せるシーンがあります。「そんなことはわかっているんだよ」とでも言いたげな表情です。

教師の試験に父親の作品を提出して合格するも、結局辞退するのは、嘘偽りの作品で学校に認められてもしょうがない=アイトールを女の子として認めるということだと考えられます。

アイトールが失踪したシーンでは「ルシア」と呼ぶことに葛藤が見られますが、最後は人目を気にせずルシアと叫びます。

親として名付けた名前が拒否される虚しさと、子供がトランスジェンダーであるという葛藤から吹っ切れて、アイトールを女の子であると完全に認めるとてもいいシーンです。

エンドクレジットのあとのシーンでアイトールがすがすがしい表情を見せるのは母から女の子であることを認めてもらえた安心を意味しています。

なぜミツバチなのか?

本作の題にもなっているミツバチ。原題は「20.000 especies de abejas」で2万種類のハチといった意味です。

養蜂家のメタファーと何を意味しているか?という質問に監督は以下のように答えています

ハチには巣の中にいる一匹一匹に、集団が機能するうえで欠かせない役割があります。しかし、巣は単に個の集まる場所ではありません。巣そのものが、一つの生物といえます。個と集団との間に生まれる緊張感という意味で、作品のテーマに通じる者があると思いました。

ルルデスのセリフにもありますが、バスク地方では養蜂家の家族の一員が亡くなるとハチの巣や巣箱を叩いてその死をハチに知らせていたようです。

アイトールが洗礼式から抜け出し「ルシアが来た」ことをハチに知らせますが、本作ではアイトールの死というよりもアイトールがルシアとしてこれから新しい人生を歩みだすという意味合いで描かれています。

 

劇場で公開中の映画をお得に観る方法

動画配信サービス「U-NEXT」なら、スマホやテレビで好きな動画が楽しめるだけじゃなく、もらえるポイントを使って全国の劇場で上映されている映画もお得に楽しむことができます。

映画チケット引換クーポンは1枚1,500ポイントで発行可能。

無料トライアルに申し込むと新規登録特典として600ポイントがもらえるので、追加で900ポイントチャージすれば、一般料金の実質半額以下(一般料金1,900円(税込)とした場合)の負担で劇場映画を観ることができます。

映画の価格も値上がりしていて、3DやIMAXではなくても1本2000円するので、1500円相当のポイントで鑑賞できるのは非常にお得です。

無料トライアル終了後には毎月1,200円分のポイントをもらうことができるので、追加で300ポイントチャージすれば、実質300円の負担で毎月1本、劇場映画を観ることができます。

月額料金は2,189円とほかの配信サービスと比べると高く感じてしまいますが、毎月もらえる1,200円分のポイントは上映中の映画だけではなくコミックや書籍にも使えるのがとても便利です。

映像作品も29万本とほかのサービスと比べ圧倒的に多く、過去の名作を視聴する場合にも「U-NEXT」でしか配信されていない作品が多くあります。

レンタルビデオ店の閉店が相次ぐ中、映画好きには最もお勧めしたい配信サービスです。

31日以内であれば解約すれば料金はかからないので、ぜひ試してください。



タイトルとURLをコピーしました