『ミッドサマー』作品概要
公開日(日本):2020年2月21日
監督:アリ・アスター
キャスト:
ダニー・アーダー(フローレンス・ピュー)
クリスチャン(ジャック・レイナー)
ジョシュ(ウィリアム・ジャクソン・ハーパー)
マーク(ウィル・ポールター)
ペレ(ウィルヘルム・ブロングレン)
サイモン(アーチー・マデクウィ)
コニー(エローラ・トルキア)
ダン(ビョルン・アンドレセン)
『ミッドサマー』あらすじ
アメリカに住む“ダニー・アーダー”は、精神的に不安定な時期が続き恋人の“クリスチャン”とうまくいっていません。
クリスチャンに精神的に頼り切りで、いわばメンヘラなダニーのことをよく思わないクリスチャンの友人たちは、そんな女は捨ててしまえと言います。
そんなダニーに追い打ちをかけるように、双極性障害の妹が一家心中を図り、ダニーは天涯孤独の身となってしまいます。
クリスチャンはそんな失意のどん底のダニーを放って、男友達(ジョシュ・マーク・ペレ)とペレの故郷で夏至(ミッドサマー)に行われる祝祭に旅行に出かけようとします。
旅行のことを知り戸惑うダニーに、男たちはダニーを旅行に誘うべきか迷います。
ジョシュこそ民間伝承に興味があり、半ば論文のために旅行に出かけようとしています。
しかし、ただ羽目を外すため――というのが旅行の目的で、正直言ってダニーはジャマなのです。
クリスチャンは結局ダニーのことをかわいそうに思い、旅行に誘うことにします。
祝祭は90年ごとに9日間に渡って浄化の儀式が行われるようです。
村の人々は民族衣装で着飾り、出し物を楽しむと言います。
スウェーデンに到着すると、ダニーたちはさらに人里離れたヘルシングランド地方へ向かいます。
そこにはペレが育った小さな集落があり、ペレの仲間たちはダニーらを歓迎します。
さらにロンドンから旅行で来たというカップルの“サイモン”と“コニー”も加わります。
彼らはマジックマッシュルームを楽しみますが、ダニーだけバットトリップをしてその場に寝込んでしまいます。
ダニーが回復すると彼らはさらに森の奥へと入っていき、目的地ホルガに到着しました。
ホルガでは1日中太陽が沈まず、自然にあふれています。
村人は皆同じ民族衣装に身を包み、まるで楽園のようです。
ダニーたちは村人に歓迎され食事をふるまってもらいます。
用意された宿は、村人も一緒に寝泊まりする広い小屋で、壁面には一面絵が描かれています。
翌日、ダニーたちは村人たちと崖の下に集まります。
皆が見ている前で女性の老人が崖から身を投げ出し、自殺をします。
続いて男性の老人も投身しますが、打ちどころがよくまだ生きています。
村人の1人が大きなハンマーでその老人の頭をかち割り殺してしまいます。
ダニーらは目の前の状況に言葉を発することができませんが、サイモンは「こんなことがあってはならない」と怒りをあらわにします。
村の長は年老いて苦しむよりも、決められた年齢で死ぬほうが彼らにとって幸せだと言います。
ホルガでは72歳で皆命を落とし、輪廻転生するということが信じられていました。
ショックのあまり、サイモンとコニーは村を出ることを決意。
しかしコニーが荷物をまとめ終わると、サイモンの姿がなく、村人は1台しかないトラックで先に村人が駅まで送っていったと言います。
ジョシュはホルガの祝祭のことを論文に書くつもりで旅行に来ていますが、クリスチャンまで祝祭のことを論文に書くと言い出します。
人のテーマを横取りしようとするクリスチャンにジョシュは怒り、ダニーを出し抜こうと躍起になります。
しかし、そもそも村の祝祭は門外不出の行事であり、論文に書くなどもってのほかでした。
ジョシュは何とかペレに村長に頼んでもらうよう説得し、村の名前を伏せることで了承を得ます。
村のにはルールが書かれた書物があります。
それは清らかな心を持つものしか書くことができないとされ、近親相姦の末に生まれた障碍者が書いたものです。
ジョシュは夜中にこっそりその書物の写真を撮りに行きますが、何者かに頭を殴られ血を流し倒れてしまいます。
翌日、倒木に立小便をしたマークに村人が激怒。
倒木はその村では先祖の魂と繋がっているとされ。皆怒り狂っています。
食事の時間になり、マークは若い女性から誘いを受け、どこかの小屋に行ってしまいます。
一方で、ダニーは村の女性が参加するという踊りに誘われます。
それはシンボルの周りを延々と踊り続け、最後まで踊り続けたものが勝者となる催しでした。
踊りを見物するクリスチャンは、村人から差し出された飲み物を飲むと意識がもうろうとし、体がほてってきます。
村長に誘い出され小屋に向かうと、クリスチャンのことを気に入っているという若い娘が裸で待っており、クリスチャンは薬の影響を抑えきれず、その娘とSEXをします。
ダニーは最後の1人になるまで踊り続け、クイーンに選ばれました。
村人はクリスチャンが村の娘とSEXしているところをダニーに目撃させます。
ダニーは泣き叫び、クリスチャンはことが終わると我に返り、小屋から逃げ出します。
さらに逃げ出した鶏小屋で、サイモンが肺をむき出しにされ鳥のように吊るされています。
肺は動いていてまだ生きているようです。
クリスチャンは鶏小屋で何者かに薬をかがされ、気絶してしまいます。
90年に1度催される祝祭の大きな目的は、村の存続のため9人の生贄をささげるためのものでした。
書物の写真を撮ろうとして殴られたジョシュ、倒木に立小便をしたマーク、コニーとサイモンに加え村からの志願者により8人の生贄はすでに決定していました。
最後の1人の決定権は女王になったダニーにあります。
ダニーは迷わずクリスチャンを選択し、クリスチャンは熊の毛皮を被せられ焼き殺されてしまいます。
その様子を見てダニーはにっこりとほほ笑むのでした。
『ミッドサマー』感想・考察
美しい自然に包まれた村で、美しい衣装に身を包んだ人々の狂気に次第に取り入れられていく。
ホラー映画として聞こえはいいものの、よくわからない表現が多いというのも事実です。
本作はなにが言いたいのか?あのシーンは一体何だったのか?
書いていければと思います。
『ミッドサマー』はなにを描いているのか?
結論から書くとアリ・アスター監督の実体験にもとづいた心境が描かれております。
アリ・アスターは『ミッドサマー』を創作する前、恋人と破局してしまいそのことを表現する方法を探していたと言います。
同じころにスウェーデンの田舎で繰り広げられるホラー映画を監督してほしいと依頼があり、本作に取り掛かったそうです。
いわばダニーはアリ・アスター自身を投影しているのです。
失恋を表現すると言いつつ、薬の影響で浮気してしまった恋人を焼き殺してしまうのだから、本当に恐ろしいのはアリ・アスターなんじゃないかと思えます。
『へレディタリー 継承』との共通点
具体的な名言こそ避けているものの、アリ・アスターの前監督作『へレディタリー 継承』も自身の実体験にもとづいて創作したと言っています。
『へレディタリー 継承』では精神を病んだ母親が登場する点や、知らないルールに巻き込まれていくということが共通点としてあげられます。
『へレディタリー 継承』では、悪魔信仰のよくわからないルールで知らないうちに家族が恐怖に追い込まれていく様子が描かれています。
『ミッドサマー』では田舎のルールがそれにあたります。
72歳で死ななければいけない、ルールが書かれた書物は障碍者しか書くことができない、生贄を捧げなければいけない……
などなど、あまりに非常識なことでも、小さな集団の中でも当たり前になってしまうと拒否できなくなるという恐怖がどちらの作品でも描かれています。