『NOPE ノープ』あらすじと考察(ネタバレあり) 本作のテーマとなるものは?

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ゲット・アウト』でアカデミー賞脚本賞を受賞し、『アス』でも高い評価を得た“ジョーダン・ピール”監督による3作目の長編作品。

主人公のOJを演じるのは『ゲット・アウト』に続きピールとタッグを組む、ダニエル・カルーヤ。

その妹で自由奔放なエメラルドを演じるのは、シンガーとして活躍しながらも、女優としても高い才能を発揮しているキキ・パーマー。

撮影監督は『TENET テネット』などクリストファー・ノーラン作品のカメラマンとして活躍するホイテ・ヴァン・ホイテマ。

雄大な自然の中に、CGでは作り出すことができないどこか不気味な雰囲気を漂わせ、暗闇の場面でも不思議と何が起こっているかははっきりとわかる奥行きのある映像を生み出しています。

『ゲット・アウト』では人種差別、『アス』では格差と、現代の社会問題を描きながらもスリラーというエンターテインメントに見事落とし込み、観客を魅了してきた、ジョーダン・ピール。

今作ではスリラーとしてはもちろん、SF作品としても楽しむことができる作品となっているのも見どころのひとつです。

今作ではそんなテーマが隠されているのか。ネタバレありであらすじとともに書いていければと思います。


『NOPE ノープ』作品概要

公開日(日本):2022年8月26日

監督:ジョーダン・ピール

キャスト
OJ・ヘイウッド(ダニエル・カルーヤ)
エメラルド・ヘイウッド(キキ・パーマー)
エンジェル・トーレス(ブランドン・ペレア)
アントレス・ホルスト(マイケル・ウィンコット)
リッキー・“ジュープ”・パク(スティーブン・ユァン)
オーティス・ヘイウッド・シニア(キース・デビッド)

『NOPE ノープ』あらすじ

ロサンゼルス郊外――

ヘイウッド一家は牧場を経営し、映画やTVで活躍する馬を調教しています。

半年前、牧場主のオーティス・ヘイウッドは、空からの落下物が直撃し、亡くなってしまいます。

飛行機からの落下物ということで話は落ち着きますが、その息子のOJ・ヘイウッドは、空にUFOのような巨大で高速の飛来物を目撃していました。

OJと妹のエメラルドは、牧場の跡を継ぎ、撮影に馬を貸し出します。

しかし経験が浅く、父のようにうまくはいきません。

OJは生活のため、【ジュピター・パーク】を経営するリッキー・“ジュープ”・パクに馬を数頭売ることになります。

ジュープは元子役俳優でしたが、ある事件をきっかけにTVから姿を消していました。

その事件は、『ゴーディ 家に帰る』というTVドラマで、チンパンジーのゴーディが、ジュープ以外の出演者に次々と襲い掛かり、セットをめちゃくちゃにしてしまうというものでした。

ある夜、牧場内の電力が不安定になり、小屋から馬が逃げ出してしまう事件が発生します。

OJは馬を連れて帰りますが、半年前に見た飛来物を目撃し、エメラルドにそのことを話します。

そのことを聞いたエメラルドは、飛来物を映像に収め、いちやく大金持ちになる計画を思いつきます。

家電量販店の店員・エンジェルも加わり、牧場内にカメラを設置しますが、なかなか飛来物をカメラに収めることはできません。

一方で、ジュープも飛来物を目撃したことがあり、OJから買った馬をエサに飛来物を呼び寄せ、見世物して一儲けしようとしていました。

飛来物がジュピター・パークへやってくると、ジュープや観客ごと会場を飲み込んでしまいます。

この行方不明事件のニュースを聞きつけたカメラマンのアントレス・ホルストも、OJたちとともに飛来物の撮影に加わります。

飛来物が無機物を食べられず吐き出すことから、OJはその正体がUFOではなく、巨大な生き物であることに気づきます。

そして馬やそのほかの動物と同様に、目を合わせなければ襲ってこないことに気づきます。

OJたちは飛来物を【Gジャン】と名付け、ホルストの手動カメラを中心に作戦を立て、撮影に挑みます。

ホルストのカメラはGジャンをフィルムカメラに収めますが、さらにいい映像を求めたホルストは、欲をかきフィルムごとGジャンに飲み込まれてしまいます。

Gジャンに追われながらも、ジュピター・パークに逃げ込んだエメラルドはコイン式のカメラで、Gジャンを撮影することに成功します。

しかし、騒ぎをかぎつけたマスコミもしっかりGジャンを撮影していました。

エメラルドの大金持ち計画は失敗に終わりますが、Gジャンに飲み込まれたと思われた、OJがエメラルドの前に姿を現すのでした。

本作のテーマは何か?

『ゲット・アウト』では差別問題、『アス』では格差問題とこれまで社会問題をテーマとしてきたジョーダン・ピール監督。

本作では【見過ごされた人々】【見世物にされ、消費された人々】がテーマとなっています。

TVや映画に出演する動物の調教をするOJやエメラルドの仕事は、業界に欠かすことができない仕事ながら、現場では雑に扱われています。

初めての映画に映った黒人騎手であり、OJのひいひいひいおじいさんは名前すら残っていません。

Gジャンを見世物にしようと、バイクでやってきた記者が、散々な目にあい、あっという間に食べられてしまうのも印象的です。

ナホム書 3章6節

映画の冒頭で、旧約聖書【ナホム書 3章6節】が引用されます。

わたしは汚らわしい物を、あなたに投げかけて、あなたをはずかしめ、見世物とする

『アス』でも旧約聖書の引用があり、今回も引用がされています。

ナホム書は全3章からなり、紀元前600年ごろのニネベ(アッシリア)という都市に対する、神様による預言・裁きが書かれています。

ニネベはユダ(エルサレム)に対して残虐な行為で侵略をし、禁止されている偶像崇拝を行います。

このことに神様が怒り、バビロン・メディア軍というさらに強大な連合軍がニネベを滅ぼすというものです。

ナホムは【慰め】という意味です。

これはニネベが神様の裁きが下ることが、しいたげられてきたユダへの慰めになるということです。

ニネベは残虐な行為を行い、ユダを侵略し富を蓄えましたが、神様の裁きを受けてしまいます。

誰かをしいたげて、豊かになっても結局は罰が当たるし、しいたげられたものはいずれ慰めがあるという教訓であると考えられます。

なぜゴーディは、ジュープを襲わなかったのか?

チンパンジーのゴーディは『ゴーディ 家に帰る』で共演者たちに襲いかかってしまいます。

これまで見世物にされてきたゴーディの復讐であり、ゴーディを見世物にして富を得てきた人たちへの裁きだと考えられます。

また、ジュープ演じるスティーブン・ユアンは、アジア人俳優として差別を受けてきたと語ります。

アジア人は「イエローモンキー」と差別的に呼ばれることから、ジュープはゴーディのメタファーであると考えられ、ゴーディはジュープを襲いません。

しかしジュープもまた、馬やGジャンを見世物にしようとしたことから、裁きを受ける=Gジャンに食べられてしまったのです。

新世紀エヴァンゲリオンの影響

OJたちが追うGジャンは、最初は円盤型ですが、ラストシーンの形状は『新世紀エヴァンゲリオン』の使途がモチーフになっているように思えます。

エヴァでも聖書がモチーフとなり、様々な人が考察合戦をしてきました。

ジョーダン・ピール監督も旧約聖書をモチーフとしていますし、もしかしたら人それぞれ、様々な解釈があってよいと考えているかもしれません。

ラストシーンでジュピター・パークに到着したときのエメラルドのバイクの止め方は、明らかに『AKIRA』に影響を受けていました。

ジョーダン・ピール監督は日本の映像作品から、影響を受けているのかもしれません。

なぜ空を見上げてはいけないのか?

本作の見どころとして宣伝されていた【空を見上げてはいけない】ということ。

この宣伝を観て映画館に足を運んだ人は【声を出してはいけない】『クワイエット・プレイス』や【息をしてはいけない】『ドント・ブリーズ』のように○○してはいけないということが物語の重要なカギになるだろうと期待していたのではないだろうか。

蓋を開いてみれば、UFOの正体が無機物ではなく生き物だから目を合わせると襲われる、というものでした。

とはいえ、目を合わせなくても襲われるときは襲われるし、空を見上げないというシーンはほとんど出てこず、これを期待して観に行った人にとっては正直物足りない作品だったかもしれません。


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