『アス(Us)』あらすじと考察(ネタバレあり)ラストの意味は?

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(C)Universal Pictures

2017年公開された『ゲット・アウト』でアカデミー賞脚本賞を受賞した“ジョーダン・ピール”監督によるサプライズ・スリラー。

バカンスを楽しむウィルソン一家の元に、自分そっくりの不審者が襲いかかるというシンプルなストーリーの中に、現代の社会問題に対する投げかけがふんだんに散りばめられています。

あらすじとともにそれらの考察も書いていければと思います。


 


『アス(Us)』作品概要

公開日(日本):2019年9月6日

監督:ジョーダン・ピール

キャスト
ルピタ・ニョンゴ (アデレード・ウィルソン/レッド)
ウィンストン・デューク(ゲイブ・ウィルソン/アブラハム)
シャハディ・ライト・ジョセフ(ゾーラ・ウィルソン/アンブラ)
エヴァン・アレックス (ジェイソン・ウィルソン/プルートー)
エリザベス・モス (キティ・タイラー)
ティム・ハイデッカー (ジョシュ・タイラー)
カリ・シェルドン (ベッカ・タイラー)
ノエル・シェルドン(リンジー・タイラー)

『アス(Us)』あらすじ

1986年、カルフォルニア州サンタクルーズ。

幼い少女“アデレード”は、海沿いにある遊園地に両親と遊びに来ていました。

両親が目を離した隙に、アデレードは1人でミラーハウスに入り込んでしまいます。

アデレードが奥に進んでいくとミラーハウスは突然停電に。

パニックになる中、アデレードが出会ったものは自分そっくりの少女でした。

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そして現在――

大人になったアデレードは“ゲイブ・ウィルソン”と結婚します。

娘の“ゾーラ”、息子の“ジェイソン”の2人の子供にも恵まれました。

幼い頃、ミラーハウスで迷子になったショックで一時は失語症になりましたが、バレエや絵を描くことで克服していました。

ウィルソン一家は夏休みを利用し、アデレードが幼少期を過ごしたサンタクルーズの別荘にバカンスに向かいます。

ゲイブはあまり乗り気でないアデレードを強引にビーチに誘い、友人のタイラー一家と落ち合い、楽しい時間を過ごします。

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夜になりウィルソン一家が別荘に戻ると、アデレードは幼い頃のトラウマが蘇り、ゲイブに家に帰りたいと打ち明けます。

アデレードは幼い頃迷い込んだミラーハウスで出会った少女が、自分を殺そうとしていると感じているのです。

せっかくバカンスに来ているのだからと、ゲイブは真面目に取り合おうしませんが、突然停電が起こります。

ジェイソンは別荘の外に赤い服を着た4人の不審者が立っていることに気づきます。

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ゲイブがバットを持って敷地から出て行くように注意すると、黒人の大男にバットを奪われ、4人の不審者は強引に別荘へ入り込んできます。

テーブルを挟み対面すると、4人の不審者は自分たちそっくりの人間だったのです。

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アデレードのドッペルゲンガー“レッド”は、大きなハサミを持っています。

しゃがれた声で話し、アデレードを手錠でテーブルに拘束してしまいます。

ゲイブのドッペルゲンガー“アブラハム”は、足を負傷したゲイブを殴って気絶させてしまいます。

レッドはゾーラに走って逃げるように命じ、ゾーラのドッペルゲンガー“アンブラ”に後を追わせます。

四足歩行で行動し、白いマスクを被ったジェイソンのドッペルゲンガー“プルートー”はジェイソンと遊びたがり、アデレードは2人に2階で遊んでくるように言いつけます。

ジェイソンは内側からは開けることができない物置に2人で入り、隙を見てプルートーを閉じ込めることに成功します。

レッドはアデレードを殺そうとしますが、閉じ込められたプルートーの叫び声を聞きつけ、物置に駆けつけます。

一方ゲイブが目を覚ますと、小さなボートに乗せられていてビニールで体を覆われていました。

ゲイブは隙を見てアブラハムをバットで殴り、ボートのスクリューにアブラハムを巻き込ませ殺すことに成功します。

アデレードはレッドがいない隙に手錠を外し、ジェイソンと別荘の外に逃げ出します。

ゾーラはものすごいスピードで迫るアンブラから逃げ切り、4人は合流しボートで逃げることに成功します。

ウィルソン一家の別荘とは少し離れたところにあるタイラー一家の別荘にもドッペルゲンガーはやってきていました。

しかし、タイラー一家はドッペルゲンガーに皆殺しにされてしまいます。

そんなことは知らず、ウィルソン一家はタイラー一家の元へ助けを求めてやってきます。

アデレードは家に引きずりこまれてしまい窮地に陥りますが、一家は協力してタイラー一家のドッペルゲンガーを皆殺しにします。

テレビをつけるとニュースではアメリカの各地で赤い服を着た集団が殺戮を繰り返していると報道されています。

映像では赤い服を着た人間が手を繋ぎあって長い列を作っています。

ウィルソン一家はタイラー家の車で逃げようとしますが、アンブラが車の前に立ちはだかります。

ものすごい身体能力でアンブラは車の屋根に登り襲い掛かりますが、ウィルソン一家はアンブラを車で轢き殺します。

夜が明けウィルソン一家がビーチに到着すると、プルートーが待ち構えていました。

プルートーは一家が乗る車を爆発させようとしますが、ジェイソンが罠に気づき窮地を逃れます。

さらにジェイソンはプルートーが自身のモノマネをすることを利用し、燃えた車の中にプルートーを誘導し殺します。

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しかし、一家の隙をついてレッドにジェイソンを誘拐されてしまい、アデレードはレッドを追い、幼い頃に迷子になった迷路に入り込みます。

迷路には地下につながる扉があり、地下に降りていくと白いタイルで覆われた移住区が広がっています。

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移住区には大量のウサギがのさばっています。

アデレードがレッドと対峙すると、レッドはドッペルゲンガーについて話し始めます。

ドッペルゲンガーは、かつて政府が作り出したクローンでした。

身体を作ることには成功したものの心を作ることはできず、地上にいる元になった人間と無意味に同じ行動をしてしまうため、放置され現代まで繁殖してきたのです。

しかし、地下でレッドは特別な存在とされ、ドッペルゲンガーたちのリーダーとなります。

アデレードはレッドとの戦いの末に勝利し、ジェイソンとともに地上に出ます。

ウィルソン一家は車で街から逃げますが、アデレードは1986年にミラーハウスで迷子になった時のことを思い出します。

アデレードがミラーハウスに迷い込んだとき、レッドは地上に出ようとしていました。

ほどなくして2人はミラーハウスで鉢合わせることになります。

レッドはアデレードの首を絞め気絶させ地下に連れ込み、アデレードの服を着込み地上に出ます。

アデレードは地下で生まれたドッペルゲンガーでした。

アデレードはふと思い出したそんな記憶に笑みを浮かべます。

アメリカ全土にはドッペルゲンガー達が手を繋ぎ、列を作っているのでした。

『アス(Us)』大事なポイント

“ドッペルゲンガー”とは何者なのか?

映画の冒頭では鍵となる字幕が出てきます。

「アメリカには地下道があり、用途は不明である。」

ニューヨークには周知はされていないものの実施に地下に生活するホームレスがいるようで、この存在が「地下には謎の都市が存在するかもしれない」という都市伝説になるまでだそうです。

映画では政府がクローンとして作ったものの心を作ることができず放置された存在として描かれています。

しかし、現実世界に置き換えると【貧困層】を表現しているのではないかと推測できます。

Hands Across America(ハンズ・アクロス・アメリカ)

映画の冒頭にはもうひとつ鍵となる映像が登場します。

それは「Hands Across America」のCMです。

1986年に実際に行われたチャリティーイベントで、西海岸から東海岸まで人々が手を繋いで横断し、その参加料が貧しい人に寄付されるというものでした。

しかし、実際の寄付額は多くはなかったようです。

日本でも24時間テレビあまり良い思いを抱かない人が一定数いるよな感覚でしょうか?

なんにしても失敗したイベントに宗教性まで見出し行動を起こすところに、ドッペルゲンガーへの憐れみを感じてしまいます。

アデレード(レッド)は自身が最初から地下で生まれたクローンだと気づいていたのか?

「ミラーハウスの地下に行ったことで思い出した」という捉え方もできそうな描写ですが「気づいていた」が正解だと思います。

理由その1

ビーチで遊び、別荘に帰ってきたアデレードは、ゲイブに幼少期のトラウマを打ち明けます。

「幼い頃迷子になり自分そっくりの少女に出会った。その少女が常に私の命を狙っている気がしてならない」

一見ドッペルゲンガー的な存在が自分にとって代わろうとしているというセリフにも感じますが、地上で生まれたアデレードの首をしめ地下に閉じ込めたことで、復讐を恐れていると考えた方が説得力があります。

理由その2

アデレードはミラーハウスに地下につながる扉があることを知っていました。

実際に迷路に来てみて思い出したという考え方もできますが、ちょっと無理がある気がします。

2つの理由からアデレードは地下から出てきた時から地上にいたはずの本当の自分がいつか復讐に来ることに怯えていたのだと考察できます。

なぜウサギなのか?

ウサギは「過剰な生殖のシンボル」として描かれています。シンプルにドッペルゲンガー(貧困層)が増えすぎていると考えることができます。

ただ「ウサギを生きたまま食べていた」とレッドのセリフにあるように地下での生活がおぞましいことであったと想像できます。

エレミア書11章11節

幼少期のアデレードがミラーハウスに向かう直前と、大人になったアデレードがビーチに向かう途中、浮浪者風の男が「エレミア書11章11節」と書かれた紙を持っています。

エレミア書は旧約聖書の一書で三大予言書のひとつ。

神ヤハウェに従わないイスラエル人がバビロンによって滅ぼされるということをエレミアが予言するという内容で、11章11節には

「民が神の声に耳を傾けず好き勝手にしているから神は民を助けない」

と書かれています。

少し深く考えすぎな気もしますが、この映画における神と民とはなんなのかということが大事になってきそうです。

災い=ドッペルゲンガーだとすると民はアメリカ国民、神はドッペルゲンガーを作った政府ということになるのでしょうか。

ただ、11:11という数字は作中で度々出てくる数字で、線対称(人間とクローンの対比)を表現しています。

同じようにドッペルゲンガーの武器がハサミなのも線対称だからです。

人の心は人の愛によって生まれるアデレードはミラーハウスの地下でドッペルゲンガーと入れ替わることになります。

レッドの説明によると政府はクローンを作ることに成功したものの心を作ることはできなかったと言っています。

しかし、地上で生まれ地上で育ったアデレードには心があります。

最初こそしゃべることができず、迷子になったショックからの失語症と診断されますが、両親から受けた愛情が注がれ心を育むことができたのだと思います。

逆に地上で生まれても地下で育ったレッドには表現の豊かさが失われているように思えます。

 

ホラー描写や風刺表現に注目が行きがちなジョーダン・ピール作品ですが、こういったハートフル?な一面が描かれていることは少し嬉しい気持ちになります。


 



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