『メメント』『インセプション』『インターステラー』をはじめ、時間をテーマにこれまで難解かつエンターテインメント性にとんだ作品を生み出してきたクリストファー・ノーラン。
1回観ただけでは理解できない作品がそろう同監督ですが、『TENET テネット』はこれまでの作品とは比べ物にならないほど理解が追い付かない作品です。
名だたる映画評論家たちも「理解できない」というほどで、「意味が分からない」ということが一つの正解であるとも言えます。
しかし、理解が追い付かないどころか主人公は何のために戦っているのかすら理解できなかった人もいるのではないでしょうか?
完全に理解することはできないにしても、そもそも何が何のために戦っているのかということと、時間の流れが把握できればある程度は理解ができると思うので、そのあたりを解説していきます。
『TENET テネット』作品概要
公開日(日本):2020年9月18日
監督:クリストファー・ノーラン
キャスト:
名もなき男(ジョン・デビッド・ワシントン)
ニール(ロバート・パティンソン)
キャット(エリザベス・デビッキ)
セイター(ケネス・ブラナー)
プリヤ(ディンプル・カパディア)
アイヴス(アーロン・テイラー=ジョンソン)
マヒア(ヒメーシュ・パテル)
バーバラ(クレマンス・ポエジー)
クロスビー(マイケル・ケイン)
『TENET テネット』解説
回転扉のルール
物語には4つの回転扉が出てきます。
これはタイムマシンではなく、時間の流れが逆行の世界に行ける装置です。
例えば2週間前に戻りたいとなると、回転扉に入り2週間過ごさなくてはいけません。
逆に2週間前からもといた2週間後に戻りたいとしましょう。
その場合は同じく回転扉に入り、時間が巡行の世界で2週間過ごすことになります。
要するに完全に元の世界に戻るには4週間の時間が必要になります。
時間は枝分かれしない
自分の生まれる前の過去に戻って自分の父親を殺すことができるか?
というパラドックスがありますが、『TENET テネット』では可能だと定義しています。
キャットが海に飛び込む自分を見たように、空港の保管庫で主人公が自分自身と戦ったように、過去に戻るということはあらかじめ決まっています。
過去に戻って何かを変えるのは不可能で、主人公やニールは決まった行動を繰り返しているだけです。
では始まりはどこなのか?という疑問が残りますが、そこがこの映画の矛盾であり、それを考え出すことはこの映画のタブーです。
アルゴリズムってなに?
主人公やニールが何のために戦っているか?
ということは、アルゴリズムを理解すれば解決します。
アルゴリズムは時間の流れを逆行にする装置です。
悪用されないよう分解され、各時間の各場所に隠されていてます。
未来人は未来に行き場を失い、回転装置を使い過去に逆行してきます。
しかし、時間の流れは巡行なので普通に戦っていては逆行側が負けてしまいます。
だったら通常の時間の流れを逆行にしてしまおうと考え、アルゴリズムを起動させようとしています。
このアルゴリズムを起動させようとたくらんでいるのがセイターです。
逆行の世界に行くと呼吸器がないと呼吸ができないようにに、時間が逆行すると巡行の人々は呼吸ができず滅んでしまいます。
このアルゴリズムを巡り第三次世界大戦が起きようとしています。
物語の流れ
ノーラン作品に共通していることですが、とにかく説明がないので話についていけなくなります。
ひとつ重要なことを見逃すと、最後まで何が何だかわからないということもあります。
とりあえず今回は主人公とニールの動きを物語に沿って図にしてみました。
主人公とニールのスタート地点をそれぞれ把握できるととても分かりやすいです。
まず、TENETの黒幕は主人公です。
未来の主人公がTENETを発足させ、ニールをキエフのテロまで逆行させます。
キエフで主人公を助けたのは逆行のニール。
ムンバイで主人公がニールに出会ったとき、ダイエットコーラが好きなことを知っていたのは、すでに未来で会っているからです。
キャットが撃たれるまで主人公とともに巡行し、スタルク12の時間挟撃作戦まで逆行します。
スタルク12の場面では少し流れが複雑になります。
逆行チームで作戦に参加していたニールですが、地下に入った主人公を助けるため、巡行に変更します。
主人公は地下で扉を開けることができなくなりますが、作戦が成功した後、ニールは逆行して地下の扉を開けることで主人公を助けます。
ここでニールは死亡してしまいます。
本当に細かいことを気にしだすと矛盾だらけになってきます。
ニールはセイターの息子?
ニールの正体はセイターの息子ではないか?
という説がにわかに浮上しています。
死ぬとわかっていながらスタルク12で扉を開けるために逆行しに行く雄姿は父が起こした悪事のけじめではないか?
また未来で主人公がニールと会うのがどのくらい未来か語られていないことから、あの幼い男の子が大人になってから主人公が接触したというのは十分に考えられます。