『DIGGER ディガー』感想・考察(ネタバレあり)トム・クルーズが演じるクズと、現実を追い越す風刺

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公開日(日本):2026年10月9日

監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
脚本:アレハンドロ・G・イニャリトゥ/アレクサンダー・ディネラリス/ニコラス・ヒアコボーネ/サビーナ・バーマン

キャスト:
ディガー・ロックウェル(トム・クルーズ)
ガネシュ(リズ・アーメッド)
コンプソン大統領(ジョン・グッドマン)
エマ(ザンドラ・ヒュラー)
ケニー(ジェシー・プレモンス)
副大統領(マイケル・スタールバーグ)
フィッツジェラルド将軍(ロバート・ジョン・バーク)

 

大作感漂う予告映像の割に明かされないストーリー

大作感漂う予告映像の割に、ストーリーがなかなか明かされない。

どうやらトム・クルーズが特殊メイクで初老になり、結構なクズを演じるらしいということは分かるものの、巷では「実はミュージカル映画で、ミュージカルってのは興行が悪いからそれを隠している」という噂が出たり、とにかく情報が出ませんでしたね。

で、実際に観てみれば、もちろんミュージカルではなく、トムはこの映画の中でも俳優という設定で、ディガー・ロックウェルというクズを「演じている」ということが序盤も序盤で分かる。

綺麗なんだけど違和感のある背景は、舞台の背景で、ミニチュアでしたと。

正直、それは宣伝の段階で公表しても差し支えないのでは? とも思ったけど、「どんな話なんだ?」と上がりに上がったハードルを余裕で上回るくらいに面白かったので、良し。

金に物を言わせて猫を延命する石油王・ディガー

今より未来の話で、スマホが見たことのないデバイスだったり、化粧台の鑑がモニターを兼用していてテレビ電話ができたりと、便利そう。

トム・クルーズ演じる役者は、まもなく開演する舞台のためにリハーサルを行っている。

結構大掛かりな興行で、演じる役柄はディガーという石油王。

で、猫。

ディガーは30歳を超える猫のマギーを大事にしているんだけど、医療の権威を使いまくって「延命」させている。

正直、もう死なせてやってくれと思うほどボロボロな姿は、ディガー自身、死にそうになっても金に物を言わせまくって延命しまくるんだろうなと想像させる。

石油王の責任と、10分間の逆ギレ演説

大統領と対等に話せるくらい権力を手に入れているディガーだけど、自身の経営する会社が石油を採掘中に事故を起こし、デカい氷山がヨーロッパに迫る。

ヨーロッパに到達すると津波が起きて、犠牲者の数がヤバい。

 

はて、どうする? というのがリハーサル中の舞台の物語。

それを大統領を含め、責任のなすりつけ合いやら、世間に公表するだしないだ、マスコミを言論統制するだと、やりたい放題。

で、大統領らおっさんたちを引き連れて氷山を細切れにするためにミサイルも打ち込むんだけど、見事に失敗する。

で、結局公表するんだけど、もちろんディガーは総スカンを喰らう。

でも、ディガーは「お前らだって安い石油が好きだろ? 即日荷物が届く世界は便利だろ?」と逆ギレを決める。

この10分の演説は本当に見もの。

ジェシー・プレモンス演じるケニーの正体

逆切れを決めたものの、やっぱりディガーは家族もろとも、どこかに島流し? を食らってしまう。

で、ジェシー・プレモンス。

リハーサルの合間のたびにトムは妻と電話するんだけど、どうやら娘が飛行機に乗ったか乗らなかったかで行方不明になっている。

それを聞きつけたジェシー・プレモンス演じるケニーがトムに近づき、「私の会社は全世界にツテがあるから、そんなの簡単に探せますよ」と。

え? 飛行機に乗ったか乗らないかも分かっていないのに、どうやって探すの? って思うんだけど、公演が終わると、なんとケニーの会社は娘を探し出す。

このケニーってのは、ディガーの甥だということが分かるんだけど、この舞台自体もケニーが出資していることが分かる。

氷山は到達し、世界は水浸しになっていた

ディガーってのは、フィクションの存在ではなく、この映画の世界線では実在している。

え? じゃあ実際の氷山はどうなった? ということなんだけど、観客はすごい大げさなマスクをしないと劇場から外に出ることができない。

世界は水浸しで、本当にめちゃくちゃになっている。

氷山も無事到着したし、氷山の中で冷凍されていたウイルスも世界に拡散しまくっているというオチ。

私たちは、この世界の崩壊をコメディとして楽しんでいいのか

で、問題なのは、ディガーは島流しを食らったはずなんだけど、その甥(一族)は、どこに行ったかも分からないはずのトムの娘を探し出すことができるくらいデカくて得体の知れない会社をやるほどのパワーがあるということ。

ディガーという叔父を憎んでいるのか、愛しているのかよくわからんが、とにかくデカい規模の舞台に出資できるくらい、まだまだ金がある。

で、それを知ってか知らずか、コメディとして消費して楽しんでいるあなたたち、どうなの? という皮肉。

風刺のつもりが、現実に追い越されていく

濱口竜介監督が、映画の中で舞台を演るのは、日常のセリフでは「そんなこと言わないだろ」というセリフも、舞台だと言わせやすい、みたいなことを言っていたのを思い出した。本作にも、その観点はあると思う。

とにかくしゃべってしゃべって、現実でこんなしゃべる奴らがいたらだいぶヤバいけど、舞台なら納得できる。

ディガーはじめ、大統領や副大統領、軍のお偉いさんも結構なふらふらなジジイで、こいつらが世界の命運を握っていると思うともう十分な地獄。

おむつでもしてんのか? と思うほど全員ズボンが膨らんでいる。

だけど近年、風刺のつもりで少し大袈裟に描いた物語が、あっという間に現実がそれを追い越していく。

このままじゃ世界がどうなることやら、という意味合いも感じた。

めちゃくちゃ面白かった。

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