『アド・アストラ』作品概要
公開日(日本):2019年9月20日
監督:ジェームズ・グレイ
キャスト:
ブラッド・ピット (ロイ・マクブライド)
トミー・リー・ジョーンズ(H.クリフォード・マクブライド)
ルース・ネッガ(ヘレン・ラントス)
リヴ・タイラー (イヴ)
ドナルド・サザーランド(トム・プルーイット大佐)
『アド・アストラ』あらすじ
時は近い未来。
太陽系外有人探査計画、通称「リマ計画」の司令官“H.クリフォード・マクブライド”は、地球を出発してから16年後、太陽系の彼方で行方不明となります。
宇宙飛行士として英雄とたたえられるクリフォードのあとを追うようにして、その息子ロイ・マクブライドも宇宙飛行士となる道を選びました。
クリフォードは宇宙飛行士として素晴らしいい業績をあげる一方で家庭をかえりみず、ロイは孤独を抱えたまま大人になります。
その孤独からロイは、周囲の人間と上辺だけの付き合いはできるものの、心を開くことができず、妻のイヴはロイの元を離れていってしまいました。
ある時、国際宇宙アンテナでの作業をしていたロイのチームは、巨大なサージ(電気嵐)に巻き込まれ墜落してしまいます。
しかしイヴが出て行ってしまった時も、サージに巻き込まれ命の危機が迫っても、ロイの心理状態は乱れることはなく、常に冷静に対処することができました。
それは宇宙飛行士として非常に優秀な能力でした。
ロイは軍から地球各地で発生しているサージを食い止める機密任務を与えられます。
クリフォードは海王星付近で生きており、サージの原因はクリフォードが関与していると軍は睨んでいるのです。
ロイは火星からクリフォードにメッセージを送るべく、クリフォードの旧友であるトム・プルーイット大佐同行の元、経由地の月へ向かいます。
月は地球各地からの観光客でにぎわっていますが、一部の地区では資源を巡る争いが繰り広げられておりました。
火星への発射台までの道中、略奪者の襲撃を受け、トムは怪我を負ってしまいます。
トムを残しひとり火星へのロケットに乗り込もうとするロイに、トムは軍がロイを信用していないことを打ち明けます。
軍はロイによるメッセージでクリフォードを止めることが出来なかった場合、格爆弾でクリフォードを始末するつもりであるというのです。
火星への道中、ロイ一行の船に救難信号が届きます。
ロイと船長が船内に入ると、凶暴化した猿が2人に襲いかかってきます。
ロイは猿を撃退しますが、船長の命を助けることは出来ませんでした。
火星に到着したロイを迎えたのは火星で生まれ育ったヘレン・ラントスでした。
ロイは軍が用意したメッセージをクリフォードに向けて発信しますが、なんの応答もありません。
そこで自らの思いを言葉にし、発信します。
すると通信室があわただしくなりますが、応答があったかについては何も教えてもらえません。
さらに自身の思い出を掘り起こし、心理状態を保つことができなくなったロイに軍は地球に帰還するように命令します。
納得のいかないロイでしたが、なすすべもなく安息室で休んでいるとヘレンがやってきます。
ヘレンの両親はクリフォードとともに宇宙に旅立っていました。
生命体を見つけることができないクリフォードはあきらめることをせず、より遠くへ探索を続けました。
一方で故郷に帰りたいクルーたちは反乱を起こし、ヘレンの両親は命を落としていたのです。
軍の命令でロイ以外のクルーたちはクリフォードの船を爆破するため、海王星に飛び立とうとしていました。
ヘレンはロイになんとしてもクリフォードを止めるように託し、火星に飛び立とうとするロケットに秘密裏にロイを潜入させます。
ロイの侵入に気づいたクルーたちはロイを始末しようとしますが、船に穴が開いてしまい、宇宙服を着ていなかったロイ以外の全員が死んでしまいます。
事故とはいえ父と同じ罪を背負ってしまったロイは、後悔と孤独を抱えながら海王星を目指します。
海王星の近く、クリフォードの船まで到着したロイ。
核爆弾の時限装置を起動しようとすると、ロイを呼ぶ声が聞こえます。
クリフォードでした。
「一緒に家に帰ろう」というロイにクリフォードは「ここが家だ」「地球には何もなく、生命体を見つけるためだけに家庭を捨てたのだ」と答えます。
それでもロイは「父さんのことが好きだと」説得し、時限装置を起動し帰りの船にクリフォードを連れて帰ろうとします。
宇宙服を着込み、帰りの船に乗り込もうとするふたりでしたが、クリフォードは突如帰ることを拒み、ロイにつながれたロープをほどき宇宙の彼方へ遠ざかっていってしまいます。
ひとり地球に戻ったロイは、これまでとらわれていたことを忘れ、身近な人々に心を委ねて生きることを決意します。
そしてロイの元には、歩み寄ってくるイヴの姿がありました。
『アド・アストラ』大事なポイント
SFの“F”は「FACT(事実)」の“F”
いや、実際には「FICTION (創作)」の“F”ですし、本作『アド・アストラ』も実際にあったお話ではありません。
なにが言いたいのかというと、本作は創作を楽しむというよりも間もなく訪れるであろう宇宙の姿を体感してほしいと創られた作品なのです。
そのため「宇宙に行く」ということはなんの物語もなく、月までは観光ロケットで行けてしまいます。
東京からアメリカに納品した製品に不備がでたからちょっと見てくる!くらいの感覚でしょうか。
「2001年宇宙の旅」や「インターステラー」が引き合いに出されることや、缶コーヒーのCMで宇宙人を演じるトミー・リー・ジョーンズが物語の鍵を握ることもあり、どんな創作的出会いが待ち受けているのかと期待してしまうところですが、そういった期待は間違いなのです。
物理的距離と心の距離
「アド・アストラ」はラテン語で“星の彼方”という意味です。
お父さんが星の彼方に行ってしまったということですね。
実際にロイ・マクブライドが父に会いに行くまでの距離は43億キロ。
これは物理的な距離だけでなく心の距離をあわらしていると言えます。
ロイは、家庭を捨て未確認生物を探す旅に出て行ってしまった父を探しに行く道中で様々な困難を乗り越えていきます。
父との距離が詰まっていくほど父の気持ちを理解できた気になり、実際に会った時は愛を語り、父を連れ戻そうとします。
しかし父はこれを拒み、さらなる宇宙の彼方へ去って行ってしまいます。
どちらか一方が心の距離を詰めようと、もう一方にその気がなければ永遠に距離が縮まることはないのです。