こんにちは。きくらげ(@moviearasuji)です。
前回映画館で観た映画が『ミッド・サマー』だったので、実に4カ月ぶりの映画館での映画鑑賞でした。
自分が行ったTOHOシネマズでは、感染防止の対策として、1席ごとに間隔を空けての鑑賞となり、予約は当日から。
入館前には検温とアルコールでの手の消毒が徹底されていました。
4カ月ぶりとなると最初に何を観るべきか相当悩みましたが、『レディ・バード』の“グレタ・ガーウィグ”監督דシアーシャ・ローナン”が再びタッグを組んだということで『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』を鑑賞しました。
基本的には4巻ある小説のうちの1~2巻がベースとなっていますが、小説では4人の姉妹がまんべんなく描かれているのに対し、映画では次女の“ジョー”が主人公となっています。
そしてなにより結末でジョーが結婚することに対して(これも原作どうりではあるのですが)、映画ではある試みがされています。
その試みについて感じたことをメインに書いていければと思います。
『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』作品概要
公開日:2020年6月12日
監督:グレタ・ガーウィグ
キャスト:
ジョー(シアーシャ・ローナン)
メグ(エマ・ワトソン)
エイミー(フローレンス・ピュー)
ベス(エリザ・スカンレン)
母(ローラ・ダーン)
ローリー(ティモシー・シャラメ)
叔母(メリル・ストリープ)
『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』あらすじ
ジョーはマーチ家の個性豊かな四姉妹の次女。
情熱家で、自分を曲げられないため周りとぶつかりながら、小説家を目指して執筆に励む日々。
控えめで美しい姉メグを慕い、姉には女優の才能があると信じるが、メグが望むのは幸せな結婚だ。
また心優しい妹ベスを我が子のように溺愛するも、彼女が立ち向かうのは、病という大きな壁。
そしてジョーとケンカの絶えない妹エイミーは、彼女の信じる形で、家族の幸せを追い求めていた。
共に夢を追い、輝かしい少女時代を過ごした4人。
そして大人になるにつれ向き合う現実は、時に厳しく、それぞれの物語を生み出していく。
小説家になることが全てだったジョーが、幼馴染のローリーのプロポーズを断ることで、孤独の意味を知ったように─。自分らしく生きることを願う4人の選択と決意が描く、4つの物語。
ジョーは本当に結婚したのか?
物語が進むにつれて、ジョーと原作小説の著者ルイーザ・メイ・オルコットが同一人物であるかのように描かれていきます。
一度は結婚を諦めたジョーでしたが、ジョーが自身の体験をもとに書いた物語『若草物語』を読んだ編集者は「主人公を結婚させなければ本は出版はしない」と断言します。
するとジョーは言うとおりに物語を書き換え、映画の主人公であるジョー自身もベア先生と結婚するというメタな展開に変わるのです。
『若草物語』の出版にあたり、編集者とジョーは権利の取り分を争います。
原作小説にジョーと編集者が権利を争う場面など描かれていません。
ではなぜ、監督のグレタ・ガーウィグは原作にない場面を物語に加えたのでしょうか?
それはグレタ・ガーウィグはジョーを通じて、ルイーザ・メイ・オルコット自身の物語を描きたかったからだと思います。
権利を争う場面はジョーの体験ではなく、ルイーザ・メイ・オルコット自身の体験ではないか?ということです。
編集者の男が言うように、南北戦争が終わって間もなく、女性の幸せは結婚することにありました。
戦争で疲れた民衆は、ジョーが作家としての幸せをつかむだけでは本当の意味で幸せになったとは共感しにくかったのでしょう。
そう考えて原作小説を読むと、ベア先生とジョーの結婚はあまりに唐突な印象を受けます。
エイミーとローリーがヨーロッパで結婚し幸せいっぱいで帰宅したとき、ジョーがふと寂しさを感じると、意中のベア先生が何の前触れもなくジョーの家を訪れるのです。
ジョーが孤独をテーマに書いた詩が新聞に載っていて、その作者のイニシャルがジョーのものだったからとベア先生は語りますが、「いやいやちょっとムリがあるでしょ?」とツッコまずにはいられません。
映画でもジョーがベア先生を追いかける場面ではこれまで丁寧に描かれてきたジョーやエイミーのキャラクター描写が雑にあつかわれているように感じます。
ルイーザ・メイ・オルコットは生涯結婚をせずに作家として家族を支えました。
ルイーザ・メイ・オルコットは作家として成功するだけでも十分に幸せだということを小説で書きたかったが、編集者の意向でやむを得ず結末を変えざるを得なかった。
その意向を監督のグレタ・ガーウィグがくみ取り、現代で映画化した。
そう考えるとおもしろいなと思います。
では、「ジョーは本当に結婚したのか?」という疑問に戻ってみます。
確かに結婚したことが描かれてはいますが、それはジョーが書いた『若草物語』の中のジョーであり、映画の主人公であるジョーは作家としては成功したが結婚はしなかった。
と自分は思います。
それを踏まえて、製本された「若草物語」を受け取るジョーの表情をみると、なんとも意味深めに思えてきます。