これが長編4作目となるフランスのジュスティーヌ・トリエ監督が手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞のパルムドールを受賞したヒューマンサスペンス。
女性監督による史上3作目のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。主人公サンドラ役は『さようなら、トニー・エルドマン』などで知られるドイツ出身のサンドラ・ヒュラー。
第96回アカデミー賞でも作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、編集賞の5部門にノミネートされています。
サンドラ・ヒュラーは2024年5月24日公開の『関心領域』にも出演しています。
『落下の解剖学』作品概要
公開日(日本):2024年2月23日
監督:ジュスティーヌ・トリエ
キャスト:
サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)
ヴァンサン(スワン・アルロー)
ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)
検事(アントワーヌ・レナルツ)
サミュエル(サミュエル・タイス)
『落下の解剖学』あらすじ
フランスの雪山の山荘――
小説家のサンドラは学生のインタビューを受けている。
しかし、上の階から夫のサミュエルが大音量で音楽を流し始め、インタビューどころではなくなってしまう。
しばらくして視覚障害を持つ息子のダニエルが愛犬のスヌープの散歩から帰ってくると、サミュエルは3階の窓から転落し死亡していた。
解剖の結果、地面にぶつかる前に頭を打っていることが致命傷になっており、状況から妻のサンドラが逮捕され裁判にかけられることになる。
サンドラは旧知の仲である弁護士のヴァンサンを頼る。
ヴァンサンはサンドラの無罪を勝ち取るにはサミュエルが自殺したという証拠がでてこなければならないと考る。
しかし、サンドラとサミュエル夫婦は4年前の事故をきっかけに喧嘩が絶えず、事件の前日も喧嘩をしていて、ダニエルが散歩に出たもの喧嘩を見ていられなくなったからでは?と考えられてしまう。
1年後――
裁判は続いており、サンドラに不利な証拠が次々と出てくる。
サンドラはバイセクシャルであり、女性と浮気をしていた。
サンドラはサミュエルの小説のアイデアをパクっていた
夫婦喧嘩の音声を録音したUSBが出てくる
サンドラが女性と浮気していたということで、インタビュー中にサミュエルが大音量で音楽をかけた理由が判明する。
インタビュアーは若い女性で、サンドラがまた浮気してしまうと考え嫉妬からインタビューを妨害したのだ。
またサンドラは4年前の事故でサミュエルは精神的に参ってしまい不能となり、身体を満たすための浮気であり、愛は無かったと反論する。
小説のアイデアについてはサミュエルがアイデアだけ思いついたものの、形にすることが出来ず正式に許諾を得たものだと反論し、さらにサミュエルの20ページ程度のアイデアをサンドラは300ページの小説として完成させていた。
喧嘩の音声はかなり生々しいものであり、ガラスの割れる音も響き渡っている。
録音の内容からは、サンドラは子育てに協力的ではなくサミュエルに押し付けていてサミュエルは小説を書く時間がないと嘆いている。
しかし、サンドラは子育てを押し付けた覚えはなく、小説を書く時間は自分が工夫して捻出するべきだし、書けないことを他人のせいにするなと一蹴している。
さらにサミュエルは助けを求めるために喧嘩を録音したのではと考えられてしまう。
サンドラ不利の中、次はダニエルのが証言台に立つ番となる。しかし子育ては日常的にサミュエルが担当しており、ダニエルはお父さんっ子だ。
ダニエルはなんとスヌープにアスピリンを飲ませ昏睡状態にしてしまう。
スヌープは何とか助かり、ダニエルはこう証言する。
スヌープがは以前にも昏睡状態になっており、サミュエルのアスピリンを誤飲したためであり、サミュエルは以前も過剰摂取による自殺未遂をしていた。
以前スヌープが死にかけたとき、誰しもいきなり死ぬことがあるから覚悟しておくように言われた。
スヌープのことだと思っていたが、今思えばサミュエル自身の自殺をほのめかす言葉だった。
この証言が決定打となりサンドラは無罪を勝ち取る。
サンドラはヴァンサンと祝杯を挙げ、ダニエルの待つ家へと帰るのだった。
『落下の解剖学』考察
なぜ真実が明かされないのか?
【雪山の山荘での転落死】【証人は弱視の息子】と言った、王道ミステリーっぽい導入で最後まで真実の行方をハラハラしながら鑑賞した人も多いかと思います。
しかし本作では真実は語られず、サンドラが無罪となったという事実だけが語られます。
一応、血痕の付き方とかどうやって転落したのか、といった物的証拠から真実を追う場面もありますが、早々に物的証拠からは何も得ることが出来ないと判断されてしまいます。
サンドラは自分がバイセクシャルであることや子育てに協力的でなかったこと、夫のアイデアをパクって小説を書いていたことが暴かれ報道もされてしまいます。
それは夫婦関係を切り取った一部でしかなく、真実がどうかというのは最終的に陪審員や裁判官にゆだねられます。
サンドラを演じたザンドラ・ヒュラーはどこか悪い女性にも見えるし、裁判で参っているようにも見えて、責めるべきなのか同情すべきなのか迷わせてしまうほど素晴らしい演技を見せています。
決定打となるのは目がほとんど見えない息子の証言で、冒頭を振り返るとダニエルは両親が大声で喧嘩をしていたという証言を、「勘違いだった」と言って覆しています。
さらに弁護士のヴァンサンはどうやらサンドラに好意を寄せていて、無罪を勝ち取るのに全力です。
真実が分からないのに結論を出していいのか?不満に思ったい人も多いかと思いますが、まさにそれがこの映画のテーマになっているのだと考えられます。
監督と脚本は実生活でのパートナー
監督のジュスティーヌ・トリエと共同脚本のアルチュール・アラリは実生活でのパートナーです。
練りに練られた脚本や、夫婦間でのリアルないざこざはパートナーだからこそできたのではないかと考えられます。
しかしやはりと言うべきかもう2度と共同での作業はしたくないと語っているようで、執筆中にもこの映画の夫婦のようなやり取りがあったのではないかと考えてしまします。
夫婦間のリアリティが追及されており、アカデミー賞作品賞にノミネートされるのも納得の作品です。
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