『恋人はアンバー』あらすじと考察(ネタバレあり)

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『恋人はアンバー』作品概要


公開日(日本):2022年11月3日

監督:デビッド・フレイン

キャスト
エディ(フィン・オシェイ)
アンバー(ローラ・ペティクルー)
ハンナ(シャロン・ホーガン)
イアン(バリー・ウォード)
ジル(シモーヌ・カービー)

『恋人はアンバー』あらすじと考察

1995年、アイルランドーー

高校生のエディは、同性愛者であることを隠しながらーーというよりも自分自身に女性が好きなんだと言い聞かせるように高校生活を送っています。

父イアンは軍人で、息子も軍人になるべきだと育ててきました。

しかし、いくら鍛えても懸垂も1回もできず、つねになよなよしています。

同級生からホモだとからかわれて否定し、クラスメイトの女の子とキスすることになりますが、うまくいきませんでした。

一方で同級生のアンバーは、生成期は優秀ながら父が自殺をしてしまい、貧しい生活を送っています。

つねに孤立していて、周りからは「レズビアン」とからかわれています。

セックスがしたいカップルに母のトレーラーハウスを内緒で貸し出し、お金を貯めています。

そのお金はこの閉鎖的な田舎から抜け出すために貯めているものでした。

エディを演じるのはアカデミー賞にもノミネートされた『New Boy』(2007年)に映画初主演となった”フィン・オシェイ”。出演作品が日本で公開となるのは本作が初めてです。

アンバー役を演じるのはこちらも日本公開作品では本作が初めての出演となる”ローラ・ペティクルー”。

2人とも同性愛者の高校生という難しい役柄を初々しくも繊細に演じきっています。

エディはキスをした女の子とうまくいかなかったことに気づいておらず、映画に誘いますが、当然振られてしまいます。

それを観ていたアンバーは「私が一緒に行ってあげる」と言い出し、2人は映画を観に行くことになります。

その帰り道、アンバーは「私はレズだけどからかわれたくないから卒業まで付き合ってるふりをしてほしい」とエディに提案します。

アンバーはエディがゲイだということも、担任の男性教師に惚れていることも見抜いていました。

エディは自分がゲイだということは否定しつつも、アンバーと付き合うこと同意します。

1995年のアイルランドとカトリック

アイルランドは2015年に世界で初めて国民投票によって同性婚が認められた国です。

しかし物語の舞台の1995年のアイルランドは、2年前に同性愛が認められたばかり――

1993年まで同性愛行為は犯罪で、懲役10年前後という重い刑が科されていました。

憲法が改正されたとはいえ、エディやアンバーが住む田舎町では特に同性愛者は肩身が狭い思いをしていたのではないのでしょうか。

さらにカトリックの信仰もその肩身の狭さを後押ししています。

キリスト教において同性愛は「地獄に落ちる」だったり「悪魔祓いの対象」なのです。

劇中にもあるように性教育の授業でエディたちが見せられるビデオでは、シスターが同性愛は「悪だ」と告げています。

付き合うことになって2人はゲイだのレズだの言われなくなり、順調な学校生活を送っていました。

ある日2人は都会のダブリンに遊びに行くことにします。

2人がバーに立ち寄ちよるとドラァグクイーンがステージで歌っていて、エディはその姿に我を忘れるくらい見惚れてしまいます。

アンバーはレズビアンのサラにナンパされますが「私はレズではなく彼氏ときている」とその場を取り繕いますが「土曜日にこのクラブで遊んでるからよかったら来てほしい」と誘われます。

土曜日――

アンバーはエディにどうしてもついてきてほしいと誘い、車でダブリンに出かけます。

母親には学校の課題だと嘘をつき了承を得ますが、その日のうちに帰ってくるように釘を刺されます。

アンバーとエディはクラスメイトからもらったドラッグを飲みクラブに入ります。

アンバーは早速サラと会い、いい感じになります。

一方でドラッグの影響で一人踊り狂うエディは、男性から誘われキスをされて受け入れますが、クラスメイトのキアンがその様子を見ていました。

パニックになったエディは、キスをしてきた男性を突き飛ばしてしまい警備員が来る事態になってしまいます。

それに気づいたアンバーがエディを連れ、クラブの外へ逃げ出します。

疲れ切った2人は車で一夜を過ごし、翌朝帰りますが、親たちはカンカンに怒っていました。

キアンもまたゲイだった

レズビアンのサラがいて、エディにキスをしてくる男性がいて、ちょっと考えれば同性愛者が集まるクラブだということはわかりそうなものですが、時代背景なのか知識不足なのかエディは全く気付いていません。

その場に居合わせたーーということは、キアンもまたゲイなのですが、エディは「クラスメイトに男とキスしていたことがバラされる」ということで頭がいっぱいになりパニックになってしまいます。

その後もキアンはエディに話そうと試みますが、エディは「自分はゲイではない」と防衛線を張りキアンを突き放してしまいます。
アンバーはその後サラと2人でデートをし、恋人関係になります。

一方でエディは、アンバーとの関係がずっと続けばいいと考え、「本当に付き合おう」と誘いますが断られ、関係を解消することになります。

アンバーは母親にサラを紹介します。

しかし、母親は神父に相談してしまい町中の人にアンバーがレズビアンだと知れ渡ってしまいます。

学校でもからかわれるアンバーはエディを見つけ声を掛けますが、エディ自分はゲイだと思われたくない一心で「レズビアン、近寄るな!」とアンバーを突き放してしまいます。

それを見ていたクラスメイトに「言いすぎだろ」と言われ、喧嘩になり、仲裁してくれた担任にキスをしてしまったり、空回りをし続けます。

アンバーは変わらず、サラといい関係を築いていきますが、エディはなんと入隊試験に合格してしまいます。

軍隊に入ること=男の世界に入りゲイである自分を完全に否定することなので、アンバーは再三「軍隊に入ったらお終いだ」とエディに忠告していました。

入隊の当日、アンバーはカップルにトレーラーハウスを貸し出そうとすると、扉にダブリンで2人で撮った写真が挟まっています。

アンバーは入隊試験の会場まで走り、エディを呼び止めます。

そして、自分がこの町を出るために貯めたお金をエディに渡し、エディがこの町から出ていくように言います。

エディは

「どこへ行けばいいかわからない」「一緒に来てほしい」

と言いますが、アンバーは

「どこへでも行ける」「一緒には行けない」

とエディに言います。

ついに決心したエディは入隊試験の会場を後にし、どこに向かうかもわからない電車に飛び乗るのでした。

 

デイビッド・フレインの実体験に基づく物語

同性愛者である2人が同性愛者であることを隠すために期間限定で恋人のふりをする。

ありそうでなかった設定と、高校生という微妙な年代の2人が繰り広げるキュートで繊細なやり取りが癖になる本作。

都会にあこがれる高校生のパワーと空回りする行動は『レディ・バード』を思い起こし、自分を偽って恋をするという設定は『ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから』を思い出しました。

インタビューで監督はデイビッド・フレイン監督は「完全に真実ではないが、悪い部分はすべて真実。恥ずかしいことは残念なことにすべて起こった」と答えています。

エディは監督自身をモデルにしているのです。

 

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